「アートウィーク東京」いよいよ11月7日から開催!ディレクター蜷川敦子が創設の狙いと今年の見どころを語る
どこから入って、出てもいい。アートの多角的な楽しみ方を提示する
──AWTでは、展示作品を購入できる展覧会「AWT FOCUS」や、建築家やアーティストと協働した空間や食事が楽しめる「AWT BAR」、学術的なシンポジウム、子どもやコレクターを目指す人向けの企画など、独自プログラムの幅広さも目を引きます。 蜷川:私自身も、アートを多角的に楽しむことが好きなんです。それに、現代の人たちはとても忙しいですよね。限られた時間のなかで訪れるなら、できるだけ多くのものを持ち帰っていただきたいという思いからこうした作りをしています。 今回のシャトルバスはどの停留所でも自由に乗り降りできるようになっていますが、「どこから入って、どこから出てもいい」という考え方はアートの楽しみ方にも言えることです。例えば「AWT BAR」ではアーティストたちと考案したカクテルを提供しています。最初から展示を観るのが億劫だという方は、まずカクテルを楽しみ、そのアーティストの世界観に興味を引かれたら展示を訪ねてみるのもいいでしょう。アートの買い方や保存方法、あるいは手放し方などに関心のある方は、参加ギャラリーが丁寧にご案内します。 こうした楽しみ方や関係者の間で共有されてきた情報を外へも発信し、アートへの関心をより多くの方に広げたい。AWTは、そうした一般の観客の方たちに向けた教育普及という側面も兼ね備えています。 さまざまな背景を持つ観客に向けたプログラムを展開しているのは、AWTがパプリックイベントだからです。公共が必要とするものは何なのか? お子さんといらっしゃる保護者の方ならどうか? 学生なら? リタイア後の方なら? 海外の方ならどうか? 20年以上、いわゆるアートシーンに携わってきた見地から、こうした立場もアートに求めるものも異なる方たちのことを想像しながらプログラムを組んでいます。そうした取り組みを通して、アートをより身近で、民主的で、自活的なものにしたいと考えています。 ──過去2回の開催に対しては、どのような声が届いていますか? 蜷川:海外からの参加者は、コレクターや美術館のキュレーター、ジャーナリストなど、いわゆるアートのプロの方が多いのですが、評判はとても良いですね。なぜかというと、AWTではアート作品やアートシーンに対して、より深く関わることができるからです。 例えばアートフェアの場合、巨大な会場に並ぶ均質なブースを回っていくので、ウインドウショッピングのような体験になりがちです。それはそれで便利なのですが、AWTではアートのために作られた空間を直接訪れ、そこでアーティストやキュレーターが生み出すものを体感しながら、じっくり話を聞けるという体験を大切にしています。またアートを、それを取り囲む東京の文化のなかで味わってもらうことも、AWTの狙いのひとつです。 東京にはビル街から下町まで、多彩な顔がありますよね。参加者はバスに乗りながら、そうした街のいろいろな表情に触れます。そして、ファッションや食なども含む、現代の東京のさまざまなカルチャーにも出会う。このように、街並みや、都市の文化の延長上に現代アートを見られるというのが、とても豊かで得難い体験だという評価をいただいています。