「アートウィーク東京」いよいよ11月7日から開催!ディレクター蜷川敦子が創設の狙いと今年の見どころを語る
蜷川敦子(にながわ あつこ) アートウィーク東京共同創設者・ディレクター/タケニナガワ代表。2008 年にタケニナガワを設⽴。新進作家から歴史的な評価の⾼い作家まで、現代アートの⽂脈で活躍する⽇本⼈作家を国際的にプロモーションする。アートウィーク東京を主催する⼀般社団法⼈コンテンポラリーアートプラットフォーム共同代表理事。「アートバーゼル」バーゼルの選考委員。2022年、将来のアートマーケットにおいて先駆となる⼈物を選ぶ「Artnet InnovatorsList」に選出。アート界で最も影響⼒のある⼈物100⼈を選ぶ「ArtReview Power 100」に2022–23年に2年連続で選出。
──当時、アートのエコシステムにはどのような課題があったのでしょうか? 蜷川:健全なエコシステムとは、アートに関わる多様なプレイヤーが有機的につながり、その規模や考え方の違いに関わらず、誰もがそれなりに生きやすい状況があることです。しかし近年では、メガギャラリーの台頭やアートフェアの価格高騰によって、若手や中堅、さらには老舗のギャラリーまでもが持続的な運営が苦しくなるなど、パワーやお金が一部に集中し他が生き残れなくなる構造的な問題が生まれていました。 成熟したアートシーンを築くには多様な才能が必要です。最初にアイデアや価値を生み出すプレイヤーがいないとメガギャラリーも仕事ができません。では、どう共存するのか? AWTはこうした課題に対して、コミュニティをフラットにつなげることで解決しようとしました。まずは、参加費を無料にして、手段やリソースを持たない若いギャラリーも気軽に参加できるようにしました。また、シャトルバスで各所をつなぐことで、新進のアートスペースが多く位置する、中心から離れたエリアへも足を運びやすくしました。 このようなネットワーク化は、東京のアートシーンを可視化することにつながります。そもそも日本では、市場を作るギャラリーと、市民の文化遺産をつくる美術館の間の溝が深く、交流がないとされてきました。それをひとつのパッケージとして紹介すれば、両者の交流が生まれ、コミュニティが育まれるだけでなく、国内外の観客やVIP、関係者に、都内の多様なアートの現場で働く人たちが見えやすくなりますよね。 また、日本のギャラリーは厳しい評価基準がある国際的なアートフェアにはなかなか入ることができないという問題があります。「アートバーゼル」と提携するAWTへの参加が、国内のギャラリーが世界につながるための後押しとなればいいと考えています。 ──まるで、都内のアートコミュニティの血の巡りを良くするような試みですね。 蜷川:そうですね。重要なことは、コミュニティのネットワークをみんなでつくり、従来は関わりのなかった人たちをつなげたり、互いに持っているものを共有したりすることだと思います。例えば、キャリアのあるギャラリーのお客さまを、バスで新進ギャラリーにお連れすることもできます。実際昨年も、私がバーゼルで出会った海外のコレクターがAWTに参加し、若いギャラリーから作品を購入するということがありました。 こうしたことは、すでに地位を確立した大きなギャラリーにとっても悪いことではありません。業界が大きくなればなるほど、その方たちもますます伸びる余地が生まれるからです。