還暦を迎えた筧利夫「役者が趣味になってきた」仕事に対する価値観が変化
「踊る大捜査線」シリーズをはじめ、俳優として数多くの話題作に出演してきた筧利夫さん。還暦を迎えた現在も精力的に映画作品を中心に出演しているが、役者という仕事に対して向き合い方が変化してきたという。「自分のためではなく誰かのために演技をしよう」と考えるようになり、最近では「仕事が趣味になってきた」と語る。また、60歳を機に東京から熱海に移住。仕事や定住地に対する価値観がどのように変化したのかを聞いた。(Yahoo!ニュース Voice)
全て勝ちに行かなくてもいい
――今年還暦を迎えられましたが、心境に変化はありますか。 筧利夫: 最近はもう年齢的にもだいぶ落ち着きを求められるようになったので、ドラマや映画では「この人のために演技をしよう」とか、「自分の演技が面白いかどうかは後回しにして、作品全体のバランスを考えよう」とか、周りのことを考えるようになりました。昔に比べてみなさんにキャーキャー言われることもなくなったので、自己中心的に考える意識が薄れてきて、やっとまともになってきたように思います。 ――以前は仕事に対してどのような向き合い方だったのでしょうか。 筧利夫: 以前は、自分が後から見て面白がるために芝居をしてました。自分がいろいろと考えた演技を見てクククッて笑いたいタイプだったので、極端な話、自分のシーンだけをすごく一生懸命見ていましたね。それから若い頃は自分のセリフが書いてある部分だけを台本から切って持っていくなど、適当な向き合い方だった時期もありました。 それとバラエティー番組にも以前はよく出ていたんですが、どんなことでも全力でバットを振りに行こうと必死でした。自分で自分の殻を破るために、いつでも清水の舞台から飛び降りる気持ちでやっていたのですが、正直大空振りすることがよくありましたね。「やって失敗するよりも、やらないで後悔する方が大きい」とよく言いますが、最近は“やってスベったダメージの方が大きいこともある”というのを身にしみて実感しています。若くて何も知らなかったからこそ出来たことですが、今はもう身体が大事なので無理をしないようにしています。 60歳になった今は、全てに対して勝ちに行くのではなくて「今日1日、何もなくてもいい」「今日は負けたけど3回に1回ぐらいなんとなく勝てればいい」と思えるようになりましたね。 ――仕事に対する向き合い方が変わったんですね。 筧利夫: 本当は仕事が一番面白ければ、それに越したことはないと思いますが、仕事は必ずしも自分がやりたいことをやっているわけではなくて、全部頼まれているもの。頼まれていることを自分なりにアレンジしていくっていうのが“仕事”だと考えているんです。自分が面白いと思っても、求められていなければ「いや、それいらないです」となるじゃないですか。だから、仕事とは別に“自分がやってて面白い”と思うものを探した方がいいし、若いうちから早めに考えていた方がいいと思いますね。 最近では、役者という仕事も段々と趣味になってきていて、本当にやりたいこととは違うんです。釣りをするみたいな感覚に近くなってきました。だから、本業というものを探している状態ですね。