現役世代が残らない…「復興住宅」2つの誤算 震災12年、石巻市で進む空き家化と高齢化 #知り続ける
夏になる頃、市街地から離れた仮設住宅に移った。単身用のワンルームで、狭いながらもプライバシーのある暮らしに戻ることができた。そこで5年近く暮らした後、2016年に復興住宅に入居した。いまはこの復興住宅を気に入っていると笑う。 「夫の仕事の関係で石巻に越してきて44年。川崎(神奈川県)にいる娘からは『一緒に住もう』と言われましたが、私にはこっちにたくさんの知り合いがいますからね。それにここの復興住宅は新築のマンションで、景色もいい。住み心地がとてもいいんですよ」
市内でも二極化する復興住宅事情
復興住宅は被災者のために自治体が設置する住宅で、災害公営住宅とも呼ばれる。東日本大震災では2012年から岩手、宮城、福島の被災3県を中心に3万戸弱が順次整備された。住宅のタイプはさまざまだ。6階建てで1LDK~4LDKまでの間取りを取りそろえた90世帯も入るようなマンションタイプの集合住宅もあれば、2階建てで10世帯ほどのいわゆるコーポタイプ、さらには1世帯1棟の戸建て住宅もある。
宮城県では1万5823戸、中でも石巻市は自治体としては最多の4456戸を整備した。家賃は入居者の収入などに応じて変わる。 世帯収入から控除額を引いた「政令月収」によって家賃の基礎額が決まり、それに「市町村の立地」と「規模(広さ)」「築年数」「利便性」という4つの係数がかけられて家賃が算出される。 例えば、間取りの広い新築の65平米の住宅だと、政令月収10万円の人の家賃は約2万6千円だが、同15万8千円の人は約3万8千円、同26万円の人は約6万8千円になる。約26万円を超えると最も高いランクとなるため、賃料は民間の賃貸物件よりも高くなってしまう。 石巻市では全壊と半壊合わせて約3万3千棟の住家被害があった。まず仮設住宅が約7千戸つくられ、民間賃貸住宅の「みなし仮設住宅」約5千戸と合わせて1万2千戸の仮設住宅が供給された。 問題はその後だった。仮設住宅を出た後、被災者はどこに住むのか。新たに自宅を建てる人もいれば、別の地域に引っ越す人もいる。では、復興住宅はどこにどれくらいつくるべきか。この時の建設計画は「手探りで」進められたと石巻市住宅課の小林悟課長補佐は明かす。