高校サッカー界に出現したアフロヘアの超大型”逸材CB”…1回戦を突破したチェイス・アンリ(尚志)の何がどう凄いのか?
アメリカ人の父親と日本人の母親の間に、2004年3月に日本で生まれたアンリは幼少期をアメリカで過ごし、中学1年生で母親の故郷である神奈川県内へ移住した。 アメリカではバスケットボールや水泳、そしてピアノを学び、サッカーに関しては友だちと遊び程度でボールを蹴るぐらいだった。なので、日本で本格的に取り組み始めたサッカーの競技歴は6年目。当初のフォワードに挫折を覚え、自ら望む形で中学2年の夏にセンターバックへ転向してから、まだ4年ちょっとしかたっていない。 ほとんど無名の存在ながらも福島県の名門・尚志にスカウトされ、10月にJヴィレッジで開催されたAFC・U-23アジアカップ予選に臨んだU-22代表に大抜擢。U-22カンボジア代表戦で先発フル出場を果たした右肩上がりの軌跡は、身長187cm体重80kgの威風堂々としたボディに宿る、規格外のポテンシャルを抜きには語れない。 U-22代表に日本サッカー協会のロールモデルコーチとして帯同し、予選でもベンチ入りした元日本代表DFの内田篤人氏は、毎週配信される自身の冠番組で「すごいのがいるから、ぜひ見てほしい」と目の前で見たアンリに言及している。 「アフロヘアなので(187cmより)もっと大きく見える。サイズが大きいととろく見えるけど、実はスピードもある。センターバックの飛び級って本当にすごいんですよ。前線の選手ならばわかるけど、後ろの選手はミスができない。それを押してでも彼を招集して、最初の試合で使うというのは、とんでもない化け物です」 ともにAFC・U-23アジアカップ予選に“飛び級”で招集され、カンボジア戦で先制ゴールを決めたMF松木玖生(青森山田)のFC東京加入が内定しているように、今大会に臨んでいる有望株のほとんどが来春の卒業後の進路が決まっている。 対照的にアンリの進路が現時点で未定となっているのは、尚志からヨーロッパへ直接移籍する可能性を追い求め、すでに9月にシュツットガルト(ドイツ)やAZ(オランダ)の練習に参加したからだ。名門アヤックス(オランダ)も興味を示し、今大会終了後の来年2月に練習参加が予定されているとも報じられている。 こうした動きに国際移籍が可能になる18歳を迎えていない状況が加わり、進路が未定となっているのだろう。もちろんJクラブも熱い視線を送り続け、県立柏の葉公園総合競技場のスタンドには複数クラブのスカウトや強化担当者が訪れていた。 もっとも、サッカー人生の究極の目標を「ヨーロッパチャンピオンズで優勝すること」と公言してきたアンリ自身は、いま現在は視線を一点だけに集中させている。 「尚志に来ていなかったら、自分はどこにも行けなかったと思う。それだけに尚志には感謝しているし、最後の大会ですべてをぶつけて全国制覇して恩返しがしたい」 1年生で臨んだ第98回大会は初戦で徳島市立(徳島)に、0-0から突入したPK戦で敗れた。後半途中から出場したアンリはPKキッカーには名を連ねていない。2年生だった昨年は福島県予選準決勝で、学法石川に敗れて7連覇を阻止された。 後半アディショナルタイムにカウンターから決めた自身の決勝ゴールで、因縁の学法石川を撃破して臨んでいる今大会。2回戦以降へ「PK戦で勝てたのは、次へ向けて自信になる」と笑顔を浮かべたアンリは、強いこだわりを抱くトレードマークのアフロヘアをなびかせながら、1回戦で大量6ゴールをあげた関東一の前に立ちはだかる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)