高校サッカー界に出現したアフロヘアの超大型”逸材CB”…1回戦を突破したチェイス・アンリ(尚志)の何がどう凄いのか?
「相手のデータはなくて、キッカーの表情や助走をよく観察した上で、自分の感覚で止めました。PKキーパーという役割をしっかりと果たせてよかったです」 JFAアカデミー福島戦でも延長戦の後半終了間際に投入されていた布川は、成し遂げたばかりの大仕事に心地よさそうな笑顔を浮かべた。心臓に悪いからと、PK戦では目をつぶっていたと試合後のオンライン会見で苦笑した仲村監督は、布川を送り出す際に「お前が2本止めれば勝てる」と檄を飛ばしていたことを明らかにした。 「練習でPKを一番止めているキーパーだったので信用していました。こういう展開も予想して、選手交代を4人までにとどめて頑張れればと思っていました」 初出場ながらベスト4に進出した、3年前の旋風を再現させられなかった瀬戸内の田中監督はPK戦よりも、PK戦に至った前後半の80分間を「尚志さんのパワーや対人の強さの部分で、ちょっと後手に回ってしまった」と振り返った。 特に最終ラインで大きな存在感を放ち続けたアンリに対しては、悔しさや驚きを通り越し、日本サッカー界に関わる一人としてその将来を称賛する言葉を残している。 「攻撃よりも対人的な強さですね。ウチでフィジカルが一番強い佐野が、アンリ選手にはね返されていましたから。彼のひとつのプレーでスタンドの雰囲気ががらりと変わりましたし、タレント性という部分も含めて、トップトップの選手を実感できました」 敵将を思わずうならせた場面は後半5分に訪れた。 自陣からカウンターを仕掛けた瀬戸内が、右サイドへ抜け出したFW澤田佳憲(2年)へロングパスを送った。対応したアンリは何度も澤田と身体をぶつけ合いながらバランスを崩さず、ついにはゴールライン際でマイボールにした。 今度は澤田が身体を寄せるが、逆にバランスを崩して転倒してしまう。ドリブルでボールを前へ運んだアンリはDF伯野航太(3年)を難なくかわし、田中監督がチームで一番強いと信頼を寄せる佐野も、ボディコンタクト勝負であっけなく完敗した。 次々と襲いかかる刺客をものともせず、味方へパスをつなげた場面にスタンドからもどよめきが上がる。もっともアンリ自身はセットプレー時に攻め上がりながらシュートが枠を外れたシーンを含めて、勝って兜の緒を締めることを忘れなかった。 「決定機が2、3回あったんですけど、それをしっかりと決め切れていない課題があるのは悔しい。ロングフィードも何回かオフサイドになっていたので、キックのタイミングをもっと見直さなければいけないと思っています」 まだまだプレーが荒削りで、雑になるのには理由がある。