妊娠中の運動が子どものぜんそくのリスクを半減させる可能性、週3回以上の運動で効果
母親の運動はどのように子どもを守るのか?
しかし幸いにも、最新の研究は、子どもがぜんそくを発症するかどうかについて、妊婦がある程度コントロールできる可能性を示唆している。 女性たちはかつて、早産や低出生体重のリスクを避けるため、妊娠中の運動は控えるように言われていた。しかし、運動は妊婦と胎児の健康に有益だと今では考えられている。 米疾病対策センター(CDC)によれば、適度な運動は、妊娠中の体重の増え過ぎや妊娠糖尿病の予防につながるだけでなく、心臓と肺の健康にもいいという。CDCは健康な妊婦に対し、早歩き、サイクリング、ヨガといった中強度の運動を週150分(2時間半)以上行うことを勧めている。 母親の運動は胎児の健康にも関連している。妊娠中の定期的な運動によって血流が増えると、胎児の肺、心臓、認知機能の発達が促されることが研究によって示されている。 一方、妊娠中の運動不足は子どもの健康状態の悪化につながる可能性がある。ノルウェーとスウェーデンの科学者が2022年に発表した研究では、妊娠の前半に運動不足だったと報告した女性の子どもは、「まあまあ活発」だったと報告した女性の子どもに比べて、生後3カ月の時点で、肺機能が低い可能性が高いと判明した。 最新の研究では、こうした結果を掘り下げるため、963組の母子を分析した。被験者は妊娠の第1期と第3期(日本での妊娠前期と後期にほぼ相当)にアンケート調査に回答し、その内容から被験者の活動レベルと子どもの健康状態を評価した。 その結果、少なくとも週3回運動していた妊婦の子どもは、運動不足だった妊婦の子どもより、ぜんそくを発症する可能性が約50%低いことがわかった。 「ワクワクするような発見」だと、米国フロリダ州ペンサコーラの医師でアレルギーと免疫を専門とするスティーブン・キムラ氏は述べている。妊婦が手軽な方法で子どものぜんそくを予防できる可能性を示唆しているためだ。 「現在は治療に重点が置かれています」とキムラ氏は話す。「ぜんそくを発症した子どもには、治療に役立つ薬や新しい生物学的製剤の注射がいくつもあります。もしリスクの高い人を特定し、母体の健康管理を改め、子どものぜんそくを減らすことができれば、それは素晴らしいことです」 キムラ氏は一例として、ぜんそくと診断された子どもを妊婦が連れて来て、次の子どもがぜんそくを発症しないよう、何ができるかを知りたがることもあると述べている。今後、少なくとも週3回適度な運動をするといった比較的簡単なことを勧められるのは素晴らしいことだとキムラ氏は考えている。 CDCの勧めに従えば、妊娠中に例えば週5日30分ずつの運動をすることになるが、それだけの体力に自信がない女性はどうだろう? 研究チームの一員である東フィンランド大学のエマ・レーッタ・ムサッカ氏は、座ったままでもできる運動がたくさんあると述べている。 「私たちの研究はまさに、何もしないより何かをした方がいいことを示しています」
文=Jen McCaffery/訳=米井香織