じつは、2000年も前にエンジンが存在していた…!さらに、原理は「現代のジェット推進そのものだった」という驚愕の事実
あの時代になぜそんな技術が!? ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか? 【画像】古代ギリシャで発明されたポンプ…「驚愕の精度」を出した素材が衝撃的すぎ! 現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さんによる、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』がベストセラーになっています。 それを記念して、残念ながら本編には収録できなかったエピソードを短期集中連載でお届けします。今回も、生没年などが未詳なことから“神秘の発明王”の異名をとるヘロンを取り上げます。 なんと今から2000 年も前に、「エンジンの原理」を確立していた!
「蒸気機関」の発明者は?
人類は、さまざまなエネルギーと技術を駆使して文明を進歩させ、物質的に豊かな、そして便利な生活を実現してきた。 人類史には“革命”とよぶにふさわしい転機がいくつかあるが、18世紀中頃にイギリスで起こった「産業革命」は、単に産業上の革命にとどまらず、人類の生活を革命的に変えた。 イギリスでは当時、工作機械、製鉄法、熔鉱炉など、幾多の発明が相次ぎ、いずれも産業革命の起動力となったが、決定的に重要な役割を演じたのは、動力革命に関わるワット(1736~1819)による1765年の蒸気機関の「発明」である。 蒸気機関の発明によって起こった産業と輸送の革命が、世界をすっかり変えたのであった。 したがって産業革命といえば、まずワットの蒸気機関なのであるが、じつは、その原型は1712年、ニューコメン(1663~1729)が発明した蒸気機関である。 しかし、蒸気がもつ潜在力を最初に現実化した人物は、ニューコメンでもワットでもない。 どういうことか?
「ヘロンの蒸気機関」
じつは、ニューコメンやワットより1600~1700年前に生きたヘロンが、“蒸気機関”の詳細を著書『プネウマティカ(圧力機構)』に書き遺しているのである。 蒸気機関の真の発明者がヘロン自身であるかどうかの確証はないが、実際に作動する蒸気機関を詳述した最初の人物がヘロンであることは間違いない。 「ヘロンの蒸気機関」を次の図に示す。 水を入れて蓋(ふた)をした大釜が、炭火のような熱源の上に置かれている。水が沸騰すると蒸気が2つのパイプを通って球体に入り、噴き上げた蒸気は球体の2つの出口から勢いよく排出されて、球体が猛烈なスピードで回転するしくみである。 回転力を利用するのは現代の蒸気機関そのものであるばかりでなく、現代のジェット推進力の原理とまったく同じである。
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