是枝裕和監督が向田邦子の代表作「阿修羅のごとく」リメイク…「最初は一字一句変えずやろうと思った」けれど【前編】
日本のテレビドラマ史上に輝く数々の作品の脚本を手がけた向田邦子(1929~81年)の代表作の一つ「阿修羅のごとく」(79年にパート1、80年にパート2)が、是枝裕和監督・脚本によりNetflixシリーズとしてリメイクされた(全7話、1月9日からNetflixで独占配信)。1962年生まれ、昭和のテレビドラマからも大きな影響を受けてきた是枝にとって、向田は大きな存在。「最初は一字一句変えずにやろうと思っていた」が、脚本を改めて読み込んで「アップデート」することにしたという。何をなぜ変えたのか。是枝に聞いた。2回に分けて掲載する。(編集委員 恩田泰子、文中敬称略)
四姉妹役は宮沢りえ・尾野真千子・蒼井優・広瀬すず
「阿修羅のごとく」は、東京の中流家庭に生まれた四姉妹(宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず)を中心とする家族劇。老境の父、竹沢恒太郎(國村隼)に愛人がいると知った4人は、母ふじ(松坂慶子)の耳には入れず事態の収拾をはかろうとする。が、実は竹沢家の女たちもそれぞれ、人には言えない愛憎や葛藤を抱えて生きていることが鮮烈に浮かび上がってくる。
物語の舞台は、オリジナル版同様、昭和50年代半ば。
長女・綱子(宮沢)は生け花の師範。夫の死後、息子を育て上げ、今は一人暮らし。仕事先の料亭主人(内野聖陽)とつきあっているが、彼には妻がいる。
次女・巻子(尾野)は専業主婦。サラリーマンの夫・鷹男(本木雅弘)との間に子供が2人。生活は安定しているが、夫に浮気の気配があって、心穏やかではない。
三女・滝子(蒼井)は恋愛とは縁遠い日々を送ってきた図書館司書。父の愛人問題にいちはやく気づいて興信所に調査を依頼。調査員の勝又(松田龍平)から思いを寄せられるが、なかなか恋に身を任せられない。
四女・咲子(広瀬)は喫茶店でウェートレスとして働きながら、同棲(どうせい)中のボクサー・陣内(藤原季節)を支えている。すぐ上の姉、滝子とは、互いに競争心のようなものを抱いて反目しあっている。