是枝裕和監督が向田邦子の代表作「阿修羅のごとく」リメイク…「最初は一字一句変えずやろうと思った」けれど【前編】
「たとえば、四女の咲子の役は、(オリジナルでは)男の幸せと不幸に引きずられていく部分がすごく強い。でも(広瀬)すずが演じるのであれば、引きずられているというよりは、自分の意志を強く持つ女性にしたほうが、彼女も生きるし、現代的だと思った。それは不倫をしている長女・綱子にしてもそうです」
自己を肯定し、他人を受け入れる
オリジナルを尊重しながら、四姉妹それぞれの自己への「肯定感」を「高めていった」とも言う。それはなぜかとこちらが問うと、是枝は「なんでだろうね」。
確かなのは、家族がそれぞれに違う生き方、違う幸せを選び取っていく姿を、今の観客も、すっとのみこめるように是枝は心を砕いているということ。何が正しいとか、何が間違いとかではなく、人には、それぞれの生き方があるのだと。
その点で象徴的なのは、三女・滝子かもしれない。四姉妹の中で最も、他人をゆるすのが苦手だった人物が、少なくとも、受け入れられるようになっていく。「そこも少し変えていったんですよね。7話を通して一番大きく変化するのは滝子だっていう形になっているんじゃないかな」