大学入試「志望校を下げないで」河合塾主席研究員が志望動向を分析 女子に“チャレンジ志向”強まる
今シーズン(2025年度)の大学入試について、大手予備校の河合塾が志望動向をまとめました。2022年度の高校1年生から導入された新学習指導要領に対応した初めての入試となりますが、受験生のチャレンジ志向が目立つといいます。河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員(63)に、受験生へのアドバイスとともに詳しく聞きました。 ――少子化が進み、大学に入りやすくなっているのでしょうか。 実は今年の18歳人口は約2万7千人増えています。大学の定員は前年並みで、これで入試が難しくなるとか易しくなるとかいうことはなく、「足踏み状態」でしょう。18歳人口の下げ止まりは3年ほど続き、その先はまた減少に転じるとみられます。 その中で、大学の再編や統廃合が進んでいます。特に首都圏と近畿圏の都市部の私立でみられ、例えばルーテル学院大(東京都)が募集停止、桃山学院大と桃山学院教育大(大阪府)が統合します。短大の募集停止は全国で23にのぼります。 一方で理系人材を増やそうという国の後押しもあり、理系学部の新設が相次いでいます。原則として定員を増やせない国立大でも、理工・情報系は特例となっています。 名古屋大は工学部の定員を前年から20人、情報学部の定員を14人増やします。岐阜大も工学部を20人、三重大も工学部を30人増やします。大阪大や神戸大、横浜国立大、筑波大、広島大、福島大も工学・情報系学部の定員を増やし、志望者には明るい情報です。 名古屋市立大は医学部に保健医療学科を新設します。2023年度にはデータサイエンス学部を新設していて、活発な動きが目立ちます。
私立大で進む定員減、女子大が苦戦
――志願者や定員が減っているところはあるのでしょうか。 私立大全体でみると、定員は前年に比べて約1400人も減ります。私立大の定員は年々増える傾向にあったのですが、こんなに減るのは私の記憶にありません。 教員養成系学部の定員を減らす大学が目立ちます。教員不足が大きな問題になっているのですが、志願者が減っているのです。卒業しても教員にならない人も多いと聞きます。 女子大も苦戦しています。男子が受けられないので市場が半分しかなく、少子化の影響を特に受けています。そこで男女共学にしたり、学部を新設したりしています。 例えば名古屋女子大は共学の「名古屋葵大学」になります。ただ3学部の定員を120人から80人に減らします。愛知淑徳大は1995年に共学になりましたが、今回新たに建築学部や教育学部を設置します。広島県の安田女子大は理工学部を新設します。 ――女子大が苦戦しているのはなぜでしょう。 女子しか受け入れないからなのか、女子大に多い人文・生活科学系の人気がないからなのか、模試の受験者の志望動向から分析しました。その結果、同じ学部なら女子大よりも共学大を選ぶ女子受験生が増加していることがわかりました。 今の受験生の母親の世代は、男女雇用機会均等法のもと、子育てと仕事を両立している方が多くいます。その姿を見て育ったことが、女子生徒の進路選択に大きな影響を与えているのではないかと思います。