加齢により萎縮していく脳を若く保つための『6つの習慣』バランスのいい食事、十分な睡眠、継続的な運動…そして一番大切なことは
記憶力の衰えや認知症が心配、という人に朗報です。何歳になってもワクワクしたり趣味に没頭したりすることは、脳の機能低下を抑えます。自身も数多の趣味を持つ脳のスペシャリストに話を聞きました(構成=山田真理) * * * * * * * ◆今すぐ見直したい6つの習慣 私は、「生涯を通じ、いかに脳の健康を保つか」を研究テーマにしています。その一環として、これまでに約16万枚におよぶ脳のMRI画像の研究や診断を行ってきました。 人間の脳は、誰でも加齢によって徐々に萎縮していきます。それに伴い、「意味理解」「処理速度」「記憶」「知識」「流暢性」といった脳の認知力(高次認知機能)も低下してしまうのです。脳の萎縮は20代後半から少しずつ始まりますが、萎縮が速い人と、遅い人に分かれていきます。その差に大きく影響するのが日々の生活習慣です。 たとえば過度の飲酒や喫煙は、脳の萎縮を促進。また、糖尿病や脂質異常症のような動脈硬化に関わる病気は血管の老化を進め、脳の血流が低下することで神経細胞の減少を招くのです。 ほかに過度のストレス、睡眠不足、変化や刺激の少ない生活も脳のさまざまな部分の萎縮に繋がることがわかっています。 そうした萎縮を少しでも遅らせ、脳の健康を維持していくためにおすすめの6つの習慣をお伝えしましょう。
まずは (1) バランスのいい食事。多くの品目をまんべんなく食べること、腸内環境を整えることが脳の健康に役立ちます。「脳に良い」などといわれる特定の食品ばかりを食べるのは、脳にとって逆に良くありません。 続いて (2) 十分な睡眠。脳の疲れを取るだけでなく、アルツハイマー型認知症の原因といわれる老廃物の排出を促す役割があります。6時間以上の睡眠を心がけましょう。 (3) 運動は、無理なく継続することが大切。全身を動かす早歩きや軽いジョギングなどの有酸素運動を、1日30分、週2回行うのが理想です。ただ最近の研究では、散歩の途中で100mだけ早歩きをするといった低強度の運動でも、習慣化すると一定の効果があることが明らかに。 (4) コミュニケーションは、脳の健康維持に大切な習慣です。会話をするときに私たちは表情や声のトーンから相手の気持ちを理解し、適切な対応を取ろうとします。このとき脳の中ではあらゆる領域が活発に活動し、刺激を受けているのです。 食事や運動にもいえることですが、好きでないことをいやいや続けるのは脳の健康に良くありません。これをすると「嬉しい、楽しい」と思えるような習慣を持ち、(5) 主観的幸福度を高めることが、ストレスを低下させて脳の健康維持に役立つことも明らかになっています。 最後に、脳にとって最高の習慣としておすすめしたいのが (6) 趣味・知的好奇心を持つことです。脳内の情報処理や情報伝達を担う神経細胞には、使えば使うほど変化する「性」という特徴があります。新しく趣味を始めたり、上達したいと努力をすることで、脳が変化する力を高めることができるのです。