ヘルスケア・メディカルに特化した「Another Kao」なぜ花王はソリューション領域を目指すのか?
本丸がメディカルというのは疑う余地がなくて、そのコア技術となるのが「仮想人体生成モデル」と「プレジション・モニタリング」だと、長谷部社長が明言しています。おそらく、まだ公表されてないさまざまなモニタリング技術が開発されており、今後それがどんどん事業化されてくるでしょう。 花王にとって計測技術は、これまでは開発時に必要なツールであって、裏方だったわけですよね。 しかし、良い製品をつくるために磨き上げてきた裏方の技術、普通は見えないものが見える技術が、ヘルスケアやメディカルでは強みになる、とわかった。単にモノを売るだけじゃなくて、これまで測れなかったものが測れることで、例えばモノの価値が可視化される。利用前と利用後の状態がわかる。あなたに最適なモノが何かわかる。これは、カスタマーサクセス、ソリューションにつながる。こういう流れですね。 花王は、大量生産・大量消費のモノ売りから脱却するぞって言っているんですね。 「リボーン」も「アナザー」も、結局のところは、生まれ変わって別の会社をつくるぞということです。ここまで培ってきた強みを活かして、これまでのやり方はやめる、ということですね。矛盾するように見えますがそうではない、非常に示唆に富むアプローチだと感じます。 花王の生体計測技術は、花王がこれまで行ってきた事業に根差した、非常に興味深いものばかりです。特許を見ると、例えば皮膚の断層計測技術や、皮脂「RNA」から「パーキンソン病」の診断を行える技術を保有していることがわかります。 他にも、指先からとれる一滴の血液から「血中のアミノ酸」(Dアミノ酸)を測定してアルツハイマーの早期診断が可能になる技術の開発なども行っています。これは、今までの消費財の品質管理で磨き上げてきた、ナノグラムレベルの分析技術の成果だそうです。 繰り返しですが、これまで裏方だった部分が、一気にコア技術になってきたわけです。何が役立つか、何が強みになるか、わからないもんですね。 こういった高精度な計測技術で取得したデータを蓄積し、「仮想人体生成モデル」が開発されたんですね。 彼らは、データを売るんじゃなくて、データからモデルをつくってプラットフォーマーとしてビジネスを始めたわけで、この辺も、これまでの(日本)企業とは一味違う感じがして頼もしいですね。
楠浦 崇央