ヘルスケア・メディカルに特化した「Another Kao」なぜ花王はソリューション領域を目指すのか?
日清の完全栄養食もかなり話題になりました。もともと花王は食品素材メーカーですから、食品会社とは当然取引があるはずです。業界の土地勘もある。でも今度は、素材ではなく「AI」「IT」で 協業していくわけです。今後どんなニュースが出るか、非常に楽しみですね。 少なくとも「仮想人体生成モデル」については、発明塾でよく言う「勝てば勝つほど勝つ仕組み」になっているように見えますので、僕は花王のここまでの取り組みを高く評価しています。知財もすごいですが、新規事業戦略としてのスピード感もある。発明塾で理想とする「新規事業を量産する知財戦略」を日々実践している企業ではないかと、思っています。 ■ アナザー花王の本丸は、「メディカル」へ 先ほど 、「Another Kao」(アナザー花王)という言葉を使いましたが、実は、この言葉は、中期経営計画にあるものなんです(図78)。その「アナザー花王」の対象領域の一つとして「ヘルスケア(メディカル)」「デジタル」が挙げられています。そこには「痛みを緩和する」「頭髪や皮膚の治癒」など、メディカル領域のキーワードが並んでいます。 図78▶「Another Kao」の対象領域はヘルスケア・デジタル 資料を見る限り、花王が目指すヘルスケア・メディカル領域の新規事業のキーワードは、「疼痛」「フレイル」「代謝」「免疫」あたりになるかなと感じました。花王は実は、アルツハイマー型認知症の早期診断に関する研究を行っています。アルツハイマー型認知症は、免疫と関係しているとされています。 フレイルにも大いに関係しているので、アルツハイマー型認知症はフレイルと免疫の両方にまたがっているという点で、花王にとって重要な疾患になります。ここまでくると、まさにメディカル領域の話になってきますね。 花王は、既存の日用品事業(化粧品やハイジーン&リビングケア事業など)については「Reborn(リボーン)Kao」と呼んでいます。こちらについては、花王の基盤になる部分と位置づけていて、それぞれ、高付加価値化と効率化で稼げる事業にしていく方針のようです。 ここまで説明してきた、ヘルスケア・メディカル事業は「ライフケア事業」と呼ばれており(図79)、「Another(アナザー)Kao」の本丸だと僕は考えてい ます。 図79▶すべての命を守る「ライフケア事業」へ 花王は「プレシジョン・ライフケア」という言葉も使っています。メディカルとヘルスケアを合わせるとライフケアになるという感じでしょうか。