高齢者置き去り? 「ITオンチな利用客」が直面する路線バスデジタル化、専門家が警鐘する現実とは
ペーパーレス化とSDGsが交差する課題
デジタルデバイドを解消するために、ITが苦手なバス利用者への配慮が進められている。特に高齢者や障がい者、IT初心者への対応として、紙の ・回数券 ・乗車券 ・路線案内 がその代表的な例だ。 もちろん、ペーパーレス化や環境負荷の削減が求められる時代ではあるが、SDGs(持続可能な開発目標)の「誰ひとり取り残さない」という理念は常に意識する必要がある。この理念は、世界全体の社会づくりの指針となっている。 公共交通でも、ユニバーサルデザインを維持することが重要だ。例えば、垂直移動においてエレベーターやエスカレーター、階段を利用者が状況に応じて選べるようにすることが、ユニバーサルデザインの本質である。 社会の平等性を保つためには、配慮不足によって生じる不平等や困難を防ぎ、誰もが平等にサービスを受けられる環境を整えることが不可欠である。
「食わず嫌い」が生むIT障壁
ITが苦手な理由のひとつに、意外にも 「食わず嫌い」 が多いことが挙げられる。実際には「やりたくない」というわけではなく、経験不足や恐れからくる不安が影響していることがほとんどだ。特に高齢者は、 ・操作ミス ・詐欺リスク を避けるために、意識的にデジタルツールへのアクセスを避ける傾向がある。また、世代間でのデジタルリテラシーの差を感じ、自分は「使えない」と思い込んでいるケースも多い。 しかし、大学でのITサポート講習を通じて、高齢者が意外にも上達することがわかっている。重要なのは、まず実際に触れて慣れることだ。この 「一線を越えさせる社会の仕組み」 が、デジタルデバイドを解消するために重要となる。実際、積極的に学びたいという意欲を持つ高齢者も多い。筆者は、ITが苦手な高齢者でも学べば十分にできるようになると確信しており、社会としてその努力を支援し、学びの機会を提供することが求められる。
ITサポートで広がる公共交通の未来
デジタルデバイドの解消は、 「社会全体の責任」 である。ITに強い人が不得意な人に対して、やさしく気軽に教え合える場を地域コミュニティーに増やすことが重要だ。すべての市民が平等に生活し、公共交通を利用できるように、デジタルインフラやパーソナルデジタルツールのサポートを気軽に提供することが求められている。 公共交通事業の運営を考慮すると、アナログとデジタルが共存する時代において、デジタル化比率を徐々に高めていくことが重要だ。誰もが取り残されないように、地域社会がITに不安を感じる人々に積極的に支援を行い、対応していく姿勢が求められる。例えば、 「バス事業者と地域の大学が連携」 すれば、即効性のある支援が可能になる。高齢者や障がい者向けのITサポートを強化し、大学の教育ノウハウを活用する場をバス事業者が提供するだけでも、大きな効果が期待できる。 現在、多くの大学にはリスキリングに関するノウハウも蓄積されており、スマートフォンやパソコンを使えない人々への配慮が、社会の包摂性を高め、全員が平等に生活できるSDGs社会の基盤を築くことにつながる。