高齢者置き去り? 「ITオンチな利用客」が直面する路線バスデジタル化、専門家が警鐘する現実とは
IT拒否反応が生む格差
日本は他国と比べてデジタル化が遅れており、依然としてアナログ社会が広がっているのが現状だ。 例えば、Covid-19の影響で働き方が見直されたものの、ハンコを押すために出社するなど、いまだにアナログ対応が続いており、これが他国から嘲笑されている。最近注目されている生成系AIの利用も、大学生など若者を中心に増えているが、全体としては他国に比べて利用率が低い。さらに、IT関連の詐欺にだまされる人も多いのが実情だ。例えば、オンデマンドバスの予約でも、約6割がITを利用しているが、残りの 「4割」 はコールセンターで予約しているという状況だ。 多くの人が「ITが苦手」と感じているが、実際には「やりたくない」という気持ちが大きいことが多い。特に高齢者には「食わず嫌い」が多いが、筆者の大学の研究室でオンデマンドバスの予約支援講習を行うと、パソコンやスマートフォンの操作に15~20分程度で慣れ、すぐに使い始める人が多い。適切な指導を受ければ、技術は習得でき、実際に使ってもらえることがわかっている。 また、大学のリスキリングプログラムでも、高齢者が半年の訓練でパソコンを使いこなせるようになる事例がある。ITが苦手な人たちに合わせてアナログ対応を続けることは、社会全体を非効率にしかねない。令和時代においてアナログ対応を続けるのは不合理であり、ITができない人は損をしてもやむを得ないという考えもある。 しかし、ITが苦手な人が社会に適応できず損をする現状は望ましくない。ITを学ぶことで脳への良い刺激となり、社会とのつながりを維持するためにも、ITスキルを身につけることは非常に重要だ。 日本のデジタルデバイド(ITやインターネットの利用における格差)の原因は、ITインフラの問題ではなく、ITに対する拒否反応にある。こうした拒否反応を解消することこそが、解決へのカギとなる。