コロナ禍に最大632億円もの大赤字を叩き出した「H.I.S.」、業績回復の牽引役はあの「変なホテル」だった
受付に人がおらず、ロボットや恐竜が出迎えてくれるホテルとして、かつて話題をさらった「変なホテル」。今、その実績が目覚ましい。H.I.S.グループの2024年10月期第3四半期決算を見ると、ホテル事業が、営業利益1016%増という驚異的な成長を遂げている。その立役者が、「変なホテル」だというのだ。 コロナ禍で存在感が薄まっていた同ホテルは、なぜここまでの躍進を遂げることができたのか。経営責任者のH.I.S.ホテルホールディングス 経営戦略本部長 遠藤正巳さんに話を聞いた。 【画像】2015年に始動、話題となった「変なホテル」、驚きの現在の様子
■コロナの逆風から1016%増益への軌跡 H.I.S.の2024年10月期第3四半期決算短信によると、ホテル事業の売上高は前年同期比133.3%の171億8600万円、営業利益は、前年同期比1016.5%の26億1800万円。桁違いの伸びを記録している。営業利益の数値は、グループ連結の55億300万円の約47%を占めた。 コロナ禍におけるH.I.S.全体の経常利益は、2020年10月期でー312億8300万円、2021年同期でー632億9900万円、2022年同期でー490億100万円。この数字から見てもホテル事業は、深刻な赤字に陥ったH.I.S.の回復を牽引する存在と言って過言ではないだろう。
好調な業績の背景には、物価高騰に伴う人件費やリネン価格の上昇、円安の進行といった外部要因もある。しかし、より本質的な理由は大きく3つある。 第1に、コロナ以後に行われた、インバウンド需要を取り込む販売戦略への転換。第2に、H.I.S.グループとの強力なシナジー。そして第3に、開業当初から磨き上げてきた省人化と効率運営のビジネスモデルだ。1つずつ見ていこう。 ■その3つの強みとは? ①インバウンド需要を取り込む販売戦略への転換
まずは、販売戦略の転換である。アフターコロナに「変なホテル」は、需給のバランスで価格を変動させる「レベニューマネジメント」の強化に加え、販路の見直しを実施した。 以前は、じゃらんや楽天など国内OTAが販売の半分以上を占めていたが、現在は、海外OTAが過半数を占めるまでに。 その結果として、インバウンドの取り込みに成功。東京・大阪など都市圏のホテルでは、2023年から高いインバウンド比率を記録し、2024年度はさらに上昇を続けているという。