苦しむ日産、内田体制5年で株価は半減…HVの投入もできず幹部「売れる車がない」
日産自動車の内田誠社長は今月、就任から5年の節目を迎えた。「売れるクルマ」を投入できずに販売台数は減少し、5年間で株価はほぼ半減するなど苦境が続き、大規模リストラの実施に追い込まれた。足元ではアクティビスト(もの言う株主)による日産株の保有といった難題も重なる。再建に向けた道筋はいまだ見えない。(向山拓) 【図解】日産の株価推移と歴代社長
甘い計画
「ハードルの高い計画を推し進め、急速に業績が低下した。できないことをできると言わせてしまう文化をつくりあげた」
内田氏は2019年12月の就任会見で強調し、実質20年近く日産トップに君臨したカルロス・ゴーン被告や西川広人前社長との決別を強調した。ただ、20年3月期連結決算の最終利益は7000億円近い赤字に転落。コロナ禍もあり、21年3月期も約4500億円の最終赤字となった。24年3月期には4000億円の最終黒字を確保し、業績は回復したかのように思われた。
しかし、日産が先月発表した24年9月中間連結決算は一転、最終黒字が192億円と前年同期比9割減となった。記者会見で要因を問われた内田氏は、「結果論だが販売計画が大きめになっていた」と釈明した。世界販売台数は就任当初の約500万台から340万台まで落ち込んでいる。
日産の現状について、大手銀幹部は「5年前と何も変わっていない」とこぼす。市場の見方も厳しい。日産株の2日の終値は360円で、就任時から5割近く落ち込んだ。この間、トヨタ自動車株は7割伸びた。
減産
苦境の原因は「売れる車がない」(幹部)ことだ。米国で電気自動車(EV)に代わって人気となっているハイブリッド車(HV)を投入できていない。
中国や欧州では低価格を売りにする中国勢の販売攻勢にあえぐ。在庫を減らすために販売奨励金を積み増す悪循環に陥っている。
日産は11月、当面の「止血策」として世界で計9000人の人員削減を公表。生産能力は2割減の400万台とする。タイの生産拠点を一部集約させるほか、米国では前年と比べて2割程度生産を減らしている。欧州の販売落ち込みも厳しく、英国工場も同規模の減産に踏み切っている。