船井電機の経営権を「1円譲渡」 破産直前、社員には知らされず
破産手続き中のAV機器メーカー・船井電機の上田智一前社長が、退任直前の今年9月、同社の経営権を1円でファンドに売却していたことが2日、分かった。船井を買収した時の価格は約250億円。金額の差や売却した理由など、社員への説明はなかった。 【写真】「赤字だったから」。1円でファンドに売却した船井電機前社長の上田智一氏 9月27日、上田氏は船井電機や親会社の株式を集約した特別目的会社の全株式を「EFI株式ファンド」(東京都)に売却して社長を辞任した。朝日新聞が入手した契約資料や関係者の話によると、この取引でファンド側が支払った対価は1円だった。 上田氏は朝日新聞の取材に対し、1円での売却について「テレビ事業売却のめどがついたタイミングで総合的に判断した。自分を利するために結んだ契約ではない」と説明した。 ファンドとの契約にはこのほか、上田氏や上田氏が所有する別会社が船井側から借りた約11.7億円を返済しなくていいことや、上田氏の役員在任中の責任を追及しないことも含まれていた。また、条件次第で上田氏が1円で全株式を買い戻せることも盛り込まれていた。
朝日新聞社