低出生体重児のモデルマウス作製、世代を超えた疾患リスク解明 東北大など
東北大学などの研究グループが、低出生体重児のモデルマウスの作製に成功した。妊娠すると肝臓や胎盤に代謝障害が起こり、出産した子マウスの体重も低下。世代を超えて負の影響が連鎖するメカニズムを解明する一方、既存の薬剤の投与が健康リスクを軽減することも分かった。低出生体重児は将来、高血圧や腎疾患などにかかりやすいとされる。今回の成果をヒトに応用し、リスクの啓発や効果的な治療薬の研究につなげていきたいという。
東北大学大学院薬学研究科の佐藤恵美子准教授(臨床薬学)らの研究グループは、2500グラム未満で生まれる低出生体重児が思春期にさしかかる年齢で尿タンパクが検出されたり、血圧が高くなったりする疫学研究結果に着目し、「適正体重で産まれた子どもとどのような違いが生じているのか」と考え、今回の研究に着手した。 マウスの子宮内に流れ込む血流を少なくする手術の方法を用いて「小さく産む」マウスを作った。このマウスを妊娠できる時期まで育てた上で、出産させた。
胎生13日と18日の胎児の腎臓の発達を観察し、通常のマウスが妊娠した胎児と比較した。その結果、血液中の老廃物をろ過する役割をもつ腎臓内の「糸球体」の数が通常のマウス群に比べ、低出生体重マウス群では有意に少なかった。
血圧に関しても、低出生体重群は通常群と生後4週まで差がなかったにもかかわらず、10週、20週と週数が増えるにつれ高血圧になっていった。低出生体重群の20週のオスのマウスには糸球体障害が発現していることも分かった。
低出生体重の次世代への影響について調べたところ、通常群は次世代でも約1.50グラムと適正な重さの子を生んだが、低出生体重群は約1.45グラムと小さくなっており、低体重が次世代に連鎖していた。その原因として低出生体重群は妊娠時に肝臓の肥大や胎盤の血管がうまく形成されていないことが観察できた。
妊娠時に肝臓の肥大が不十分なことで低酸素状態を生み、通常の肝代謝経路が変化したために、胎児に栄養を十分に供給できていなかった。そこで、佐藤准教授は血管拡張作用があり、肺高血圧薬・勃起不全治療薬として厚生労働省の認可を受けている「タダラフィル」を母体に投与して、低出生群の病態を改善できるかどうか確かめた。