タイミーの成長に黄色信号 先発者の勝ち抜きが難しい理由 (濵口誠一 中小企業診断士)
■プラットフォームビジネスで後発ながら急成長したPayPay
付加価値を出すことが難しいプラットフォーム市場の一つに、キャッシュレス市場がある。基本機能は支払をスムーズに行うことのみだからだ。ここでは、PayPayが後発ながら急成長した。 PayPayは2018年12月に「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施した。最大20%のキャッシュバックの効果もあり、2年でユーザー数は3500万人を突破、2022年には業界1位の楽天が6200億ポイント発行したのに対してPayPayは6000億ポイント発行と猛追している (参考:たった5年で業界トップまで駆け上がった[PayPay]…その「拡大」と「課題」 現代ビジネス 2023/12/05)。 加盟店に対しては手数料無料キャンペーンを行い一気に拡大した。キャンペーン実施中は当然赤字になるので、赤字に耐えられるだけの資本力が必要である。PayPayは大企業の資本力を活かして一気に拡大した。 そしてPayPayがソフトバンクの資金力でQR決済のシェアを一気に奪った結果、先行者であるOrigami Pay(オリガミペイ)は1株たったの1円、すべての株式が259万円でメルペイに事業譲渡され、人員も9割リストラされたと報じられている (参考:メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円、事実上の経営破綻で社員9割リストラ ダイヤモンドオンライン 2020/02/06)。 スポットワーク市場でもこれぐらい過酷な競争が発生しても全く不思議ではない。
■大手の資本力で猛追する競合
PayPayの例のように、大手は資本力があるので広告も思い切って打つことができ、知名度の面でも競合の方が優位に立ちやすい。タイミーが切り開いた意識改革の土台に乗ってうま味だけを享受できる構造だ。 特に、メルカリやリクルートなどは既存サービスの影響力があり知名度が高い。 メルカリの運営するスキマバイト求人サイト「メルカリハロ」は、サービス開始から3カ月弱でワーカーの登録者数が500万人、事業者の数も5万拠点を超えたという(2024年5月末時点、メルカリプレスリリースより)。タイミーは登録者数860万人、クライアントの拠点数28.6万(2024年7月末時点、2024年10月期第3四半期決算資料より)と、まだまだ大きな差があるものの短期間で猛追している。 メルカリはフリマアプリ市場において、後発ながらトップを取った実績がある。大量の出資を集め、広告やアプリの利便性に大量に投資をし、先発のフリルを一気に抜き去った。タイミーも同様に、あっという間に抜かれる可能性は十分にある。