光文社が推進するデジタル化と今後の行方
書籍のヒットとコミック編集室の現状
書籍の現状については書籍事業局・コンテンツビジネス局担当の折敷出慎治取締役に聞いた。 「光文社の書籍はミステリーと時代小説が看板と言われていますが、11月には東野圭吾さんの新シリーズ『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』の文庫が出て、2作目の単行本が1月に出ます。文庫の『ブラック・ショーマン』は初版30万部でスタートし、売れ行きも好調です。 そのほか単行本としては、藤岡陽子さんの『リラの花咲くけものみち』が7月に刊行されて12月初め現在6刷2万8000部、青山美智子さんの『リカバリー・カバヒコ』が9月刊行で現在3刷5万2000部、一穂ミチさんの『ツミデミック』が11月刊行で現在3刷2万部とヒット作も続いています。 時代小説も佐伯泰英さん始め好調です。 青山さんや一穂さんは本屋大賞の常連の作家でもあるし、光文社も今後、本屋大賞を狙っていきたいと思っています。23年はそのほか10月に坂木司さんの『アンと幸福』、誉田哲也さんの『マリスアングル』、あさのあつこさんの『野火、奔る』が出るなど、かなり強力なラインナップが揃いました。 作品の映像化についても、朝倉かすみさんの『平場の月』の映画化が決まっていますし、24年には染井為人さんの『正体』が公開予定です。プロモーション部により映像化についても今後、働きかけを強めることになります。 ノンフィクションでは、スヌーピーシリーズの第1弾、第2弾が版を重ね、24年3月には第3弾が出ます。また栗山英樹さんの『栗山ノート2』が8月に刊行され、売れています。 そのほか翻訳書ですが、『万物の黎明』という定価5500円の高額本を9月に出したのですが、これが版を重ねて売り上げに貢献し、今期はノンフィクションもうまく回っている感じです。 あとは海外版権ですが、文庫の『ちびねこ亭』シリーズが3月に8作目が出るんですけども、これがヨーロッパをはじめ13言語15カ国で契約がとれるなど海外で好評です。ヨーロッパは猫ブームらしいのですね。海外版権は中国が大きな市場なのですが、いま以上に他の地域にも力を入れたいと思っています」 光文社が新たに取り組んでいるマンガ部門についても聞いた。 「マンガは光文社では新規事業に近いですが、これまでコミック事業室という部署名で文庫編集部に置いていました。それは、光文社文庫の時代小説をコミカライズできないかという意図があったのですが、一般読者向け作品、BL作品を同時に管理していくためコミック編集室として独立させました。また、一般読者向けの二つのコミックサイトを『COMIC熱帯』に統合し、BLサイトも『光文社BL COMICS』にリニューアルしました。 光文社の場合、これまでBLコミックを中心に続けてきてそれが300作品くらいになっているのですが、新しい作品も急ピッチで市場に投入しています。11月に『ヒズ・リトル・アンバー』というBLコミックが上下巻で発売されたのですが、これが紙で7万4000部(特装版の上下巻含む)、電子は12万DL(ダウンロード)を超えています。そういうヒット作も出て、マンガ部門はようやく黒字になる見通しです」(折敷出取締役) 現在、コンテンツビジネス局が管轄している『JJ』についても聞いた。 「既に持っているコンテンツで利益を上げるだけでなく、これからは新規のコンテンツ事業にも取り組まないといけない。 そういう思いからコンテンツビジネス局ではK-POPの事業にも取り組んでいます。『JJ』が22年11月に不定期刊行になりウェブサイトだけは残している状態だったので、もったいないなあと思い、『JJ』ブランドを生かしつつK-POPのコンテンツも入れながら、サイトリニューアルをしました。入社3年目の女性社員が担当したJJモデルオーディションは、6月に開始して、11月にグランプリを決定したのですが、1億円以上の売り上げを達成しました。『JJ』のブランドを使って事業として収益を上げたわけです。他にも国土交通省や自治体と連携した『半島は日本の台所』プロジェクトなどの事業がコンテンツビジネス局では進行しています」(同)