昭和初期221万戸から146軒へと99.9999%激減。「ほぼ絶滅」の国内でのシルク作りを「復活させねばならぬ」深刻な理由
紆余曲折経て養蚕復活プロジェクトに着手。まずは畑づくりからスタート
難しいことは百も承知で、現在に合わせた養蚕を探らねばならない。こうして始まったのが「犬山かいこ~んプロジェクト」です。犬山市の耕作放棄地(2300坪)を桑畑にし、養蚕を復活させるプロジェクト。 テニスコート30面分ほどの土地を徐々に桑畑として開墾しなおしています。 「 犬山の城下町に築110年の古民家を改装して絹屋のお店をオープンさせたことがきっかけです。犬山について調べたところ、明治から昭和初期にかけては養蚕がたいそう盛んだったにも関わらず、今は養蚕農家は一軒もない。ならば、この犬山でこそ復活させたいと痛感したのが動機です」 2023年11月に伐採をスタート、24年4月には桑の植樹会を開催しました。7月には桑茶づくり体験会を実施、桑の葉の収穫会も8月9月とすでに2回実施しました。これから10月には看板作りとバーべキュー炉作りを予定、 12月と25年1月には桑の伐採を行い、3月に再び植樹を行う予定です。 「蚕は1頭で約100グラムの桑の葉を食べます。蚕が育つだけの桑を供給し続けられるようにするのが当面の目標。また、次世代の意識育成のため、子どもたちへの蚕のワークショップも始めました。夏休みの自由研究のテーマにもなるし、育てていく過程で蚕に興味を持ってもらうことができる。蚕が吐く糸がこんなに素晴らしい素材で、それがものづくりに生かされているなど自分で育てることで今までしるきっかけがなかったものを知ってもらういい機会になりました。養蚕を単なる産業ではなく、暮らしであり、学びであり、生き物の命でありと360度からとらえ直すことが現代的なのではないかと」
今後抱く夢は「国産シルクの完全復活」、そしてシルク関連製品の拡充
現在は靴下やナイトキャップなど雑貨商品をメインで展開している「絹屋」。今後はシルクの特徴を生かした化粧品や、食品にも力を入れていきたいと考えているそう。 「360度の視点でいうと、蚕は昆虫食として注目を集めており、将来貴重なたんぱく源にもなる可能性があります。日本はこれだけ健康食品が多く販売されていますから、安心安全の日本製で食品を展開できるかもしれません。また、今は数少ないですがシルクの保湿成分を生かしたハンドクリームや石鹸も展開しています。毎日使うものだからこそ、多くのファンを作ってリピーターになってもらうことができる化粧品も広げていきたいと思っています」 本物にこだわる「絹屋」だからこそできるシルク混率の高いアイテムにも注力する予定です。主婦の友社「ゆうゆうtime」は大醍が作るシルクの商品に大注目しています!
オトナサローネ編集部 井一美穂