ステーブルコインが日本で大ブレークする兆し──世界を揺さぶる “デジタルマネー” が日本上陸【コラム】
金融審議会で浮上した日本円ペッグ・ステーブルコイン案
昨年11月、金融審議会は作業部会を開き、日本円に連動するステーブルコインに関して突っ込んだ議論を行った。 そのなかで金融庁は、ステーブルコイン=日本円の価値を裏付ける担保資産に、流動性の高い日本国債を認める案を示した。 満期が3カ月の国債、あるいは満期が3カ月を超えていても、取得時点での残存期間が3カ月以内の国債を活用するのはどうか。国債と定期預金をリザーブファンドに組み入れる際、その比率の上限を50%とするべきかなど、金融庁が公開した審議会資料には同案についての討論ポイントが記載されている。 世界で30兆円を超えるまでに拡大したUSDTとUSDCの設計手法や、「MiCA」と呼ばれる欧州連合(EU)が定める暗号資産市場規制を参考にしながら、日本版ステーブルコインがどうあるべきかを「前向き」に議論する場であったと言える。 一方、ステーブルコインの誕生がもたらした「最大のリスク」、と言っても過言ではない事象が世界で見え隠れしているのも事実だ。
FTが報じたテザーを使った巨額マネーロンダリング
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は12月16日、英国家犯罪対策庁(NCA)がロンドンやモスクワ、ドバイをまたにかけた数十億ドル(数千億円)規模のマネーロンダリングを行ってきたネットワークを摘発したと報じた。 ロシアのスパイや欧州の麻薬密売組織などが、暗号資産を使って制裁を回避するシステムを構築してきた。このネットワークが資金洗浄に使っていたのがテザーが発行する「USDT」だったという衝撃的な記事だ。 金融審議会でも当然、パブリックブロックチェーン上で国境を越えて流通するステーブルコインのリスクを指摘している。 「匿名性が高く、点々流通する電子決済手段(ステーブルコイン)については、マネーロンダリングとテロ資金供与のリスクが高く……、受託者・仲介者に送付人と受取人の情報を把握させることとし、適切に監督を行っていくことが考えられる」と部会資料には、見直しの方向性としての一案が太字で記載された。 日本では2022年に「資金決済法」という法律が改正され、ステーブルコインが「電子決済手段」の1つに位置づけられてから3年が過ぎようとしている。SBI VCトレードが計画しているUSDCの国内流通が始まれば、2025年は「ステーブルコイン元年」と呼ばれるようになるかもしれない。