ステーブルコインが日本で大ブレークする兆し──世界を揺さぶる “デジタルマネー” が日本上陸【コラム】
ステーブルコインのヘビーユーザー
1ステーブルコイン=$1の価値を保つために、テザー社と、USDCを発行する米サークル社は共にリザーブファンドを作り、その中で現金の米ドルや米国短期債などを積み上げている。テザーとサークルのホームページを見れば、両社がどれだけの米国債や現金、公社債を組み入れたMMFなどをリザーブファンドで保有しているかが分かる。 端的に言えば、ステーブルコインの価値を裏付けるものは、米国の経済力や財務力、国力を示す法定通貨の米ドルと、米国債ということになる。 現時点でステーブルコインの使いやすさを一番良く知っているのは、世界で日常的に暗号資産を取引している人たちだ。 例えば、株式や投資信託を売買するとき、多くの個人投資家は証券口座と銀行口座を使って、口座内の日本円や米ドルなどの法定通貨を元に取引を行うが、暗号資産取引やブロックチェーン上で機能する金融サービス(DeFiと呼ばれているサービス)の取引では、USDTとUSDCが基軸通貨・待機通貨としての役割を果たす。 保有している暗号資産の取引ポジションを整理して「現金化」する時は、ステーブルコインに換えて管理する。暗号資産などのトークン取引やステーブルコインの送受信は、金融界が築き上げてきた金融レールの上で行われるのではなく、暗号資産レールの上で即時処理される。 暗号資産のトレーダーに加えて、ステーブルコインの利用者が著しく増えているのが、アフリカや南米、東南アジア諸国に住み、十分な銀行サービスを受けられない人たちだ。
日本人には馴染みのないアフリカ、南米のお金事情
2050年までに著しい経済成長が期待され、世界人口の約4分の1をアフリカが占めると言われる。この大陸の経済をけん引しているケニア、ナイジェリア、南アフリカには、基本的な銀行サービスを受けられない「Unbanked(非銀行利用者層)」と、「Underbanked(銀行口座を保有しているが他の代替金融サービスに依存している層)」と呼ばれる膨大な数の人が暮らす。 中国や東南アジアの一部の国がそうであったように、国家の社会基盤を作りあげる上で、安価なスマートフォンとインターネットが普及する時間は、従来の金融システムを整備するために必要な時間よりも短い。 その結果、不安定な自国通貨をコツコツ貯めるより、米ドルに連動するステーブルコインを携帯端末のデジタルウォレットや暗号資産取引アプリで保管した方が、自らの資産を安定的に保存できると考える。ただでさえ、ケニアやナイジェリアでは自国通貨を現金の米ドルに替えることはそう簡単ではない。 さらに、ステーブルコインを利用した国際送金は、速さと簡単さ、手数料のどれをとっても、銀行を利用した従来の国際送金よりも魅力的に映るだろう。世界経済フォーラムの報告書によると、アフリカのサハラ砂漠以南の国々では、零細・中小企業が全体の95%を占め、このエリアのGDPのおよそ5割を稼ぐ。 大陸の企業活動を支える金融サービスが慢性的に不完全な状態が続いてるなか、一部の零細企業は米ドル型ステーブルコインによる決済をすでに始めている。政府や銀行主導の金融基盤の整備が遅々として進まない状況を黙って眺めていても、彼らの生活は一向に豊かにならない。