ステーブルコインが日本で大ブレークする兆し──世界を揺さぶる “デジタルマネー” が日本上陸【コラム】
法規制が未整備の金融大国・アメリカで、活発化する大企業の動き
世界最大の金融市場である米国は、ステーブルコインの法規制が未整備のままだ。暗号資産・支持派に転じたドナルド・トランプ氏が、ステーブルコインを含むデジタル資産の法整備をどう進めていくかを世界が注視している。 それでも、一部の大手企業はステーブルコインの事業開発をすでに進めてきた。 その1社が、世界で約4億3000万人が利用し、米国内では2億5000万を超えるユーザーを抱えるオンライン決済・送金サービスのペイパル・ホールディングス(PayPal)だ。 ペイパルは2023年、独自の米ドル連動ステーブルコイン「ペイパル USD(PYUSD)」を開発した。 USDTやUSDCと同様に、PYUSDは米ドル預金や米短期国債を裏付け資産とする担保型のステーブルコインで、ペイパルはまず米国内での利用を広げようとしている。発行はパクソス・トラストが担っている。 個人向けに暗号資産の取引サービスを強化してきたペイパルだが、昨年には同様のサービスを企業ユーザーが利用できるようにした。同時に、PYUSDを使った初の企業間決済を完了させた。法定通貨だけでなく、暗号資産レールの上で取引されるステーブルコインによる決済・送金市場でも、ペイパルはその存在感を強めるための準備を進めた。 PYUSDの時価総額は12月26日時点で、5億7,000万ドル(約900億円)。ペイパルの巨大なユーザー基盤を考えると、PYUSDの流通量はまだまだ伸びしろがありそうだ。 一方、クレジットカードのグローバルブランドとして知られ、決済システムを世界中の金融機関やフィンテック企業に提供するビザ(VISA)は、銀行にターゲットを置いたステーブルコイン戦略を掲げた。 ビザは今年、ステーブルコインを発行する銀行を支援するプラットフォームの運営を始める。「ビザ・トークン化資産プラットフォーム(VTAP)」と名付けられたプラットフォームを利用することで、銀行はトークンの発行と移転ができる。 現在、スペインの大手銀行、BBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)が、ビザのプラットフォームを試験運用している。今年中に、イーサリアムブロックチェーン上で一部の顧客を対象とした実用化実験を始める方針だ。 2008年、サトシ・ナカモトと名乗る人物(またはグループ)がホワイトペーパーを発表して、銀行などの仲介者を必要としないピアツーピア(P2P)の電子マネーシステム「ビットコイン」が誕生した。その後、アプリケーションの開発者が使いやすいイーサリアム・ブロックチェーンが生まれ、トークン(デジタル資産)を軸にした新たなデジタル経済システムの成長が期待されるようになった。 ステーブルコインは、現在の経済価値や国家価値を裏付ける資産(国が発行する通貨や債券)と、未来のトークン経済をつなぐ決済手段ではないだろうか。従来の社会基盤の整備プロセスを踏襲しない「リープフロッグ型」の経済成長を続ける新興国では、ステーブルコインの利用が拡大してきた。 2025年、世界経済をけん引する米国や欧州、そして日本のような先進国は、このイノベーションをどう活かすか、それともブレーキをかけるのか? 注目が集まる。 |インタビュー・文:佐藤茂|撮影:多田圭祐
CoinDesk Japan 編集部