街で見かけたマダムに心惹かれた“グレーのワントーン”。「近くでキレイ」より「遠目に映える」大人ニットスタイル【エディター鈴木奈代】
ニットは主役でなくパンツとの「繋ぎ役」
ニットって、それ自体でコーディネートのアレンジを効かせるものというより、私にとってはもう少し控えめな存在で、あくまでも馴染ませるイメージ。主役というよりは、パンツとの「繋ぎ役」という位置付けです。デザイン性に富んでいるものより、フィット感が好きなものだったり、風合いがよくて着心地が良いものをまといたいと思うのは、それもあると思います。 クローゼットのボトムスは、100%と言えるくらいほぼパンツ。そして、ワントーンの着こなしばかり。ワントーンのコーディネートが大好きです。ニットとパンツは色を合わせて繋がるように、セットアップのように着ています。 「最愛」というと、アイテムの話になることが多いですが、私の場合はきっと「バランス」なんですよね。ニットとパンツのワントーンスタイルは、これまでも、この先もずっと変わらず好き。私のおしゃれの基軸です。
近くできれい、より「遠目で素敵」に憧れて
こんなふうにグレーのニットに、明度の高いグレーのパンツを。この上にジャケットを合わせたり、アウターだけ別の色にしたり……。自分軸は変えずに、今年らしさやその日の気分をアウトラインに加えて、おしゃれを楽しんでいます。 インナーを白Tシャツにすることが多かったのですが、この冬は白シャツにして、ちょっとトラッドな着こなしに。そのくらいのアレンジでも十分。去年と違う気分で楽しめます。 ニットが短めなので、ウエストはベルトをしてメリハリを。足元は白いソックスにコンビネーションのローファー。襟元と手元から覗かせた白シャツとのリンクで、重たくなりがちな冬に清潔感と軽やかさを。 最近また楽器を習いたいなぁと思っていることもあり、ネイルカラーも気が向いた時だけ。ほとんど塗らないんです。お食事に行く日は、顔まわりにスカーフをあしらって彩りを加えたりしています。 今日のポイントカラーは、エルメスのバッグ「プリュム」。もう25年以上愛用しているものなんです。 30代の中盤だったか、たまたまデパートで洒脱なマダムに出会ったんです。その方は、この色と同じエルメスの「ケリー」を持っていて、その佇まいがなんて素敵なんだろう! って、頭から離れなくて。その後、たまたまショップで出会ったのがこのバッグ。デザインは異なるけれど、あのマダムに一歩近づける! って、思い切って購入したものなんですよ。 そのマダムも、全身グレーでした。ワントーンが好きになったのも、そのマダムの影響ですね。年齢を重ねたら、近くできれいな人より、遠目に素敵な女性の方がいいんだな、って。パッと見かけてすっかり魅了されてしまった彼女への憧れが、私の中に深く刷り込まれてしまったのだと思います。 きっと、今の私は当時のマダムと同じくらいの年齢なのではないでしょうか。……少しは近づけているかな(笑)。 撮影/渡辺謙太郎 ヘア&メイク/小澤実和 取材・構成/松井陽子