元日本代表主将・井原の監督手腕は?
J2のアビスパ福岡で初めての監督業に挑んでいる元日本代表キャプテン、井原正巳氏が手応えをつかみつつある。開幕3連敗と「産みの苦しみ」をたっぷりと味わわされたが、その後の3試合で2勝1分けと巻き返し、一時は最下位に沈んだ順位を12位にまで上げてきた。 試合内容を見ても、少しずつながらチーム状態が上向いてきていることがわかる。3連敗中はすべて相手に先制点を奪われて後手を踏んだが、ホームで行われた3月29日のロアッソ熊本戦ではキャンプから取り組んできた組織的な守備が上手く機能。1対0で初勝利をあげた。 昨シーズンのアビスパは、リーグ全体で4番目に多い60失点を喫して16位に低迷。2年間にわたって指揮を執ってきた、スロベニア人のマリヤン・プシュニク監督以下の首脳陣が刷新されている。 日本代表の不動のセンターバックとして、歴代2位となる国際Aマッチ122試合に出場。「アジアの壁」の異名を拝命した井原監督は、まず守備の再建を掲げた。それだけに、完封でつかみ取った初勝利に「流れが変わってきた」と笑顔を見せていた。 「勝ち点を獲得できない状況だと、選手たちの自信という部分を含めて、精神的に明るいというわけにはいかない。その意味では、勝ち点3を全員の力で勝ち取れたことで雰囲気もよくなった。勝つことが一番の薬ですから」 浦和レッズでプレーした2002年シーズンを最後に、13年間に及んだ現役生活にピリオドを打った。その後は解説者などを務めながら指導者ライセンスを取得。北京五輪に出場したU‐23日本代表コーチを経て、2009年シーズンから柏レイソルのコーチを務めた。 レイソルでは名将ネルシーニョ監督と5年半にわたってコンビを組み、J1、天皇杯、ナビスコカップと国内三大タイトル制覇をすべて経験。同監督の退任が決まった昨シーズン限りで、レイソルとの契約も満了した。そこへ届いたのが、アビスパ監督就任のオファーだった。 ネルシーニョ監督の強い希望もあってコーチとしてサポートし続けてきたが、チャンスがあれば、という思いも常に抱いてきた。アビスパからのオファーはベストのタイミングだったわけだが、監督としての手腕が未知数だった井原氏に、チームの再建役として白羽の矢を立てたのはなぜなのか。