元日本代表主将・井原の監督手腕は?
鹿島アントラーズの強化担当部長やジーコジャパン時代の日本代表チーム部部長などを歴任し、現在はアビスパ福岡株式会社の取締役を務める野見山篤氏は、現役時代やコーチ時代に積み重ねられてきた井原氏の豊富な経験に「不安はない」と厚い信頼を寄せる。 「チームが変わろうとしているときに、新しい、フレッシュな監督が必要だと考えました。現役時代にあれだけの実績を築いたわけですから、選手たちから寄せられる信頼も厚い。最初はちょっともがきましたけど、戦術や考え方が十分に浸透していない部分もあったと思うので」 アビスパは2013年度末の段階で約2800万円の債務超過に陥っていた。昨年度の見込み決算で解消のめどが立たなければJリーグからの退会を余議なくされたなかで、昨年8月に福岡市に本社を置くシステムソフト社が約1億円を出資。筆頭株主となることで危機が回避された。 今年3月末には、システムソフト社の親会社であるアパマンショップホールディングスの川森敬史常務が新社長に就任。昨シーズンは空白だった胸スポンサーも福岡地所に決まった。経営体制を含めたチーム全体が一新された、新生アビスパの象徴が井原監督というわけだ。 真面目で実直な人柄で誰からも慕われた現役時代の立ち居振る舞い同様に、井原監督はオーソドックスな手法で守備組織の再建に取り組んでいる。浦和レッズから完全移籍で加入し、守備陣のリーダー役を託された24歳の濱田水輝が言う。 「監督が一番求めるのは球際でファイトするところですね」 全員に激しい闘争心と豊富な運動量を徹底させた上で、最終ラインを高めに設定。再前線との距離をコンパクトに保って形成したブロックを状況に応じて上下動させ、組織力で相手ボールを奪って素早く、かつ鋭い攻撃に連動させる。 プシュニク前監督は前線からの激しいプレスを志向したが、攻守の切り替えが明らかに遅れている状況でも「前から」を繰り返させた。必然的にプレスは単発となってチーム全体が間延びし、いたる箇所に生じた綻びを相手に突かれた挙げ句に失点を積み重ねた。 新チームの始動時から昨シーズンまでの悪癖をなかなか除去することができず、スタートダッシュでつまずく要因にもなった。チーム状態がようやく上向きかけてきた背景には戦術の浸透ともうひとつ、井原監督の柔軟な采配がある。