松下由樹「『アイコ十六歳』でデビューしてもう40年。死を見つめることで、今をどう生きるべきかが見えてきた」
◆本当のお終活とは何か? 「お終活シリーズ」は是非、ご家族で映画館に足を運んでいただき、帰りにお茶でも飲みながら「お終活」についてフランクに語り合っていただけたら嬉しいです。今回の作品の中に、桃井さんのはからいで、霊柩車が葬儀場から火葬場まで、少し遠回りをして満開の桜の下を通るというシーンがあります。 あれは家族がお母さんの想いを知り、葬儀の担当にも共有していなければできなかったことです。本作をご覧になった後なら、すごく自然な感じで親御さんに「若い頃どんな夢を持っていたの?」「2人の馴れ初めって?」といったことも聞けるのではないでしょうか。そこから生まれる絆もあるはず。想いを伝える、想いを受け取るというのは、お終活の醍醐味だと思います。 40代、50代の方の中には、自分のお終活について考えるのはまだ早いと思っておられる方が多いようです。私もそうでした。でも物を整理することだけがお終活なのではなく、生き方を整えることが大事なのだと思うようになりました。 それに、まだ若いと思っていても時が経つのって早いんですよねぇ。私がオーディションを受けて、映画『アイコ十六歳』でデビューしたのは15歳の時。すでに40年が経過しました。(笑)とはいえ出演する作品が違えば、自分の演じる役も違うので、いつも新鮮でマンネリを感じたことはありません。 一生現役でいるのが夢ですが、そのためにどう生きるのかといったら、1つひとつのお仕事と真摯に向き合って精一杯に務めることです。「お終活」効果で丁寧に生きて行こうというテーマを備えることができたわけですが、作品や撮影現場が明るすぎて……。死に対する恐怖が消えたばかりか、永遠に死なないんじゃないか? なんて思っている自分もいて、これっていいのか悪いのか、ちょっと微妙な問題ですよね。(笑) (構成=丸山あかね)
松下由樹