なぜSansanはオフィスにこだわるの?「出会いからイノベーションを生み出す」ための空間づくりの工夫|グッドカンパニー研究 Vol.11
遊び心のある制度でつなぐ、部署を超えたつながり
横石:そういった意味では、オフィスのデザインはもちろん社内制度や福利厚生の軸にも、Sansanの指針が結びついていそうですね。 野村:はい。特に制度面では、会社の成長に伴い事業が細分化されて、コミュニケーションの幅が狭くなっているという危機感がありました。 たとえば「Bill One」の事業部にいれば、「Bill One」のメンバーとは会話をするものの、ほかの部署の人とはほとんど話さなくなってしまう。これは業務に向き合っていると自然に起きてしまう現象です。 そこで私たちは、業務上のつながりの有無に関係なく、「人」としてつながれる仕掛けづくりをはじめました。「よいこ」という部活動の制度や、仲間との雑談のお供にオフィス内の冷蔵庫にあるドリンクを無料で利用できる「ヨリアイ」、部門や拠点が異なるメンバーでの飲食費を支援する「Know Me」など、Sansanにはコミュニケーションを支援する社内制度がたくさんあるんですよ。 横石:ネーミングも会社の制度とは思えないくらい印象的なものが多いですね。 野村:名称へのこだわりは強いんです。「名前募集中!」というスレッドを立てて社員からアイデアを募ることもあり、運用後に気軽に使ってもらえるワードを徹底的に議論します。 たとえば、仕事と子育ての両立を支援する「OYACO」は、働きながら子育てをする社員を対象とした制度で、仕事と子育てを両立するために必要なサービスを支援し、事業成長を後押しすることを目的としています。ネーミングはそのまま「親子」の意味もありますが、働く親(OYA)が仕事にも、子育てにもコミット(COMMIT)できるようにという思いも込められているんです。 これらは福利厚生を目的とした制度ではなく、社員の生産性向上にコミットするための戦略的な制度設計と捉えています。
開放的な「Park」が彩る、偶発的な出会いの舞台装置
横石:オフィスに入って突然現れる広大なオープンエリアがあるんですが、ここのテーマが「Park」と伺って驚きました。通常来客したゲストは狭い空間で肩身狭く待たされることも多いわけですが、ここはその対極にあります。 加賀谷:公園は、誰もが気軽に立ち寄れて、自然とコミュニケーションが生まれる場所ですよね。さまざまな案を検討しましたが、最終的に「Park」という名称が、私たちの目指す空間のあり方としっくりきました。 横石:オフィス全体のコンセプトである「Nature」についても教えてください。名刺に関わる事業をしている会社として、紙、つまり木へのリスペクトも込められているのでしょうか。 加賀谷:そうですね。「Nature」は、社員が自然から活力を得られる空間づくりを目指したコンセプトです。ただしキャンプ場のようなアウトドア感ではなく、都会的で洗練された形で自然を取り入れることにこだわりました。また「Nature」には本質という意味もあり、社員が本質的な行動を生み出せるようにという想いも込めています。 野村:本当にこのエリアは開放感があって、みんなの顔が見えるところがいいんですよ。 横石:お二人が考える、このオフィスの一番のおすすめポイントを教えていただけますか。 加賀谷:私は「Park」の空間と、今までのオフィスにはなかった大型LEDビジョンです。月2回の全社会議もここを配信会場として行なうのですが、オンラインを含めて2,000名近い社員が参加します。 野村:私は28階から32階までを結ぶ内階段が気に入っています。 社員の行き来が多くて、「久しぶり!」みたいな声がよく聞こえてくるんですよ。僕自身、このあいだ中途入社で研修を担当した方と久しぶりに出会って、飲みに行く約束をしました。 加賀谷:「Park」は「ヨリアイ」で終業後に飲食できる場でもあるので、内階段を通って帰る社員が自然と立ち寄れる仕掛けにもなっています。 設置にはコストがかかりましたし、将来的に原状回復するときのことも考慮する必要がありましたが、本当につくって良かった設備の一つです。