なぜSansanはオフィスにこだわるの?「出会いからイノベーションを生み出す」ための空間づくりの工夫|グッドカンパニー研究 Vol.11
「オフィス戦略部」が支える、本当に働きやすいオフィスづくり
横石:加賀谷さんが所属されている「オフィス戦略部」という専門部署の存在が印象的です。一般的な総務部ではなく、独立した部署として設置されているのは珍しいですね。 野村:オフィス戦略部は日常的な課題から、大きなオフィス戦略まで一貫して担当しているので、社内では「オフィ戦に連絡しよう!」という言葉がよく聞かれます(笑)。 加賀谷:そうですね。何か困ったことがあれば、すぐに相談に来てくれます(笑)。私は昨年10月に入社したのですが、まさにこの部署の存在が決め手でした。 オフィス移転プロジェクトに携わりたいという思いもあり、前職で総務部のファシリティ担当をしていた経験を活かせると考えたんです。前の会社ではオフィスの位置づけが高くなかったので、これほどオフィスを大切にする企業文化に強く惹かれました。 横石:新オフィスに移転して、社内の雰囲気や働き方は変化しましたか? 加賀谷:「出社したくなるオフィス」という理想を形にできたことで、よりコミュニケーションが生まれやすくなったと感じています。 野村:以前はいくつかの組織が別のビルにいるなど、同じ表参道エリアでも拠点が分散していたんです。それが一つの場所に集まったことで、全社員が交流するための施策を考えやすくなりました。 もちろん大阪など地方拠点との連携は継続的な課題ですが、多くの社員が同じ場所で働くという基盤ができたことで、人事制度を考える際にもいろんな発想が生まれやすくなっています。
全員でつむぐミッション・ビジョン・バリューズが導く、オフィスという大きな船
横石:Sansanにとって、オフィスが経営戦略の一端を担っていることを強く感じました。今後のオフィス運営について、課題や展望をお聞かせください。 野村:コミュニケーションの可視化が一つの課題です。たとえば「Know Me」制度の利用データと、社員同士で感謝メッセージを送り合う「Unipos」のデータを組み合わせることで、新しいつながりの創出を数値化できないか。そんなことを構想しています。 興味深いのは、社員同士の飲食費を補助する制度「Know Me」の効果です。オンラインでの飲食費も補助対象ではあるのですが、実態としてはほとんどの利用がオフラインであり、自然と利用者の出社率が約75%まで上がるんです。 加賀谷:現在は部署によって柔軟な出社体制を取っています。社員満足度を保ちながら、出社率を高める施策も積極的に検討していきたいですね。 横石:最後の質問になりますが、改めてお二人が考えるグッドカンパニー、いい会社とはどんな会社だと思われますか。 野村:私は、ミッション・ビジョン・バリューズの浸透が重要だと考えています。 共通の目的があり、そこに向かって全員がまっすぐに突き進んでいく─そういう会社が「グッドカンパニー」なのではないかと。このオフィスはその象徴として機能していると思います。まるで船のようにみんなが協働している感覚ですね。 実は当社の経営理念である「Sansanのカタチ」は、全社員で議論するプロセスを経て決めているんです。今年は1年以上かけてパーパスについて議論を重ねています。パーパスをつくるかつくらないか、つくるならばどういうパーパスが必要で、つくらないならなぜいらないのか。最初に1,500人を250チームに分け、そこから執行役員、取締役と議論を重ねていくんです。 横石:昨今、代理店やコンサルティングに依頼することも少なくないわけですが、社内でしっかり対話や議論を大切にされているんですね。 野村:そうですね。議論を通して、個人の価値観と会社の価値観が重なる部分を見つけていく。その過程がないと、本当の意味での組織のパワーは出ないと考えています。 加賀谷:私は入社時に、5日間かけて当社の企業理念「Sansanのカタチ」を徹底的に学ぶ研修に衝撃を受けました。あの5日間は、全社員が同じ方向を向くためには、とても大事な時間だったと感じています。 「Sansanのカタチ」のなかで、私はValuesの一つである「体験を想像する」が特に好きです。今回のオフィス移転も、来客動線の設計から細部に至るまで、すべての場面で体験を想像しながらつくり上げました。 こうした姿勢を持てる会社は、「グッドカンパニー」と言えるのではないでしょうか。これからも社員の声を大切にしながら、より良いオフィスづくりを続けていきたいですね。