なぜSansanはオフィスにこだわるの?「出会いからイノベーションを生み出す」ための空間づくりの工夫|グッドカンパニー研究 Vol.11
執務フロアは全席フリーアドレス制を採用し、多くの席に外部モニターが設置されています。エレベーターだけでなく、オフィス内に設置された内階段を使って移動できるのも大きな特徴です。 そんなオフィスから見えてきた新しい働き方とは? どのような想いを込めて新オフィスをデザインされたのか、人事本部 Employee Success部の野村 稔さん、コーポレート本部 オフィス戦略部の加賀谷 洋輔さんに聞きました。 グッドカンパニー研究 Vol.11 【調査するオフィス】 Sansan株式会社/東京都渋谷区 【話を聞いた人】 野村 稔さん/Sansan株式会社 人事本部 Employee Success部 Culture & Onboarding グループ グループマネジャー 加賀谷 洋輔さん/Sansan株式会社 コーポレート本部 オフィス戦略部 マネジャー
コロナ禍の逆風のなかで「オフィス・セントリック」を選択
横石 崇(以下、横石): Sansan株式会社のミッションは「出会いからイノベーションを生み出す」。このオフィスに一歩足を踏み入れた時から、そのミッションが空間設計の軸になっていることが伝わってきました。 以前のオフィスもお邪魔したことがありますが、御社らしいステキな場をつくられていました。今回の渋谷への移転が事業戦略や企業文化にどのような進化をもたらすのかは大変興味深いです。まずは、移転の経緯についてお聞かせいただけますか。 野村 稔さん(以下、野村):2007年の創業以来、当社は営業DXサービス「Sansan」や、インボイス管理サービス「Bill One」など、働き方を変えるDXサービスを提供してきました。 加賀谷 洋輔さん(以下、加賀谷):直近3年間で約700名以上の人員増加があり、移転の最大の理由は事業拡大と採用強化です。 以前の表参道本社も1フロア300坪と広かったのですが、座席も会議室も争奪戦が起きるほど手狭になっていました。今回の移転では、分散していたグループ会社や事業部の拠点も集約しています。 横石:なぜ新たな拠点として渋谷を選ばれたのでしょうか? 加賀谷:このオフィスは駅からのアクセスが良く、また渋谷桜丘という地名自体が、4月、出会いのシーズンを連想させますよね。その象徴性が、私たちのミッションとも響き合っていると感じました。 横石:駅から雨に濡れずにこれるのはポイント高いですよね。Sansanは以前から、働き方改革に力を入れてこられましたが、このオフィスづくりにもその姿勢が表れているのでしょうか。 野村:はい。当社は、リモートワークを併用しつつ、オフィスで働くことを基点とする「オフィス・セントリック」という考え方を大切にしています。 コロナ禍で在宅ワークを取り入れましたが、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションを考えたとき、社員同士が会わない環境で本当にイノベーションは起きるのだろうか、という本質的な問いに直面したんです。 そうした意味で、オフィスにみんなが集まってくるための施策を“実際にやる”ことを、とても大事にしています。 横石:世の中ではDXやデジタルシフトとセットのようにしてリモートワークが語られますが、Sansanの考え方はちょっと違うのですね。 野村:私たちは長年、働き方のDXに携わってきました。 その経験から、人と人との出会いの価値は数値では測れないかもしれませんが、真のイノベーションはそこから生まれると確信しています。当社が提供しているサービスも、元をたどれば人と人の出会いから生まれてきたものです。 横石:「オフィス・セントリック」を打ち出されたのは、具体的にいつ頃からでしょうか? 野村:2021年です。コロナ禍で完全リモートワークを経験して約1年後、あえてこの方針を打ち出しました。 当社のミッションを考えたとき、完全フルリモートではその実現が難しいと考えました。社員同士が出会い、シナジーを生み、その会話からイノベーションが生まれる。その経験が、私たちの事業の原点にもなっています。