なぜ32歳の新谷仁美はここまで強いのか…驚異的日本新で1万m五輪代表を決めた理由
新谷が心身ともに成長したことと周囲のサポート。プラスしてシューズの進化もあった。マラソン・駅伝でナイキの厚底シューズが席巻しているが、その技術を生かした“高速スパイク”だ。 今回の日本選手権では前述した通り、10000mで自己ベストが続出したが、女子は出走21人中14人、男子は出走51人(OPの外国人選手を含む)中43人がナイキの高速スパイクを着用。男子で日本新記録&東京五輪参加標準記録を突破した相澤晃(旭化成)と伊藤達彦(Honda)も同スパイクを履いていた。 すべてを味方につけた新谷は日本記録を大幅に塗り替えた。しかし、満足はしていない。 「復帰したときに10000mの日本記録を更新しないと世界では戦えないと思ってました。世界大会はレースの上げ下げがあるので、まずは30分30秒前後のタイムを出さないと世界との差は縮まりません。一段階はクリアできたと思うんですけど、世界のトップクラスは29分20秒前後。私の30分20秒では300m先に優勝者がいます。そういう現実を見たらまだまだです」 ただし、33歳で迎える五輪は、24歳で戦った五輪とは大きく異なる。「強い味方ができたことが一番大きな違いです」と新谷は胸を張る。 東京五輪の目標を聞かれると、「アスリートとして、パフォーマーとして、人として最高のパフォーマンスを見せたいと思っています。コロナ禍のなかで開催されるのであれば、結果以上のものを残さないといけない」と“向上心”はさらに高まっている。年を重ねても新谷仁美はまだまだ強くなるに違いない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)