「あの子を殺して、自分も一緒に…」精神疾患がある子の親が抱える「深すぎる苦悩」とは
「あの子を殺して、自分も一緒に死のうと思いました」
このように、本人が悩み苦しむだけでなく、彼/彼女を支える家族もまた、不安の底に落とされることになります。多くの家族が抱えることになるのが、「この子の親なきあとの生活はどうなるのだろう」という不安です。 生活するためにはお金が必要です。疾患・障害を抱えたこの子は働けるのだろうか、仮に働けなかった場合、どうすれば収入を確保してあげられるのか、収入が得られない場合は死ぬしかないのか……そんな不安がふくらみ、家族にのしかかっていきます。 精神科病院でソーシャルワーカーとして働いていたころ、私は年に4~5回、参加しやすい土曜日の午後に「家族教室」を開催していました。前半は講演と質疑応答、後半は7~8人ぐらいの小グループでお茶を飲み、菓子をつまみながら茶話会(さわかい:グループワーク)をするのが常でした。 茶話会の場では、障害を抱えた我が子について「あの子を殺して,自分も一緒に死のうと思いました」と苦しい胸の内を明かしてくださる家族もいました。そこまで追いつめられてしまうのです。 まさに瀬戸際といえるでしょうが、そこまでになってしまった原因は何でしょうか。 ひとつには孤立があると思います。しかし孤立は、支えてくれる家族や仲間が見つかれば、時の経過とともに癒えていきます。ある家族は、家族教室に通い、同じような立場の人たちの話を聞くうちに、こう思えるようになったと教えてくれました。 「あの方が言われたような、子どもを殺して一緒に死ぬということを、私もかつて思ったことがありました。ですが、普段、外(地域)では決して言えません。そんなことでも、ここ(家族教室)でなら素直になって何でも言えるんですね。皆わかり合える感じがするんです。こういう場があることはとっても大切だと思いました」 切羽詰まっている状況をわかってくれる人がいる。そして自分と同じような立場にいる他の家族から共感してもらえる……「自分1人じゃなかった」という思いで孤独感から解放されて出た言葉だと思います。共感してもらえるだけでも、当事者の癒しにつながるのです。