齋藤知事の「公職選挙法違反」疑惑に筆者が覚えた「違和感」…そもそもの「落とし穴」
政治資金規正法という細かいルール
一方、岸田政権の退陣、さらには前回の総選挙で自民党が惨敗する原因となった、パーティー券収入の裏金化問題は、政治資金規正法の違反にかかわるものである。同法は、政治団体や公職の候補者の活動に必要な政治資金の出入りを適正に管理・報告(公開)する仕組みや、寄附の実施者、方法、金額などについてルール化を行っている。 何かと話題になる政治資金収支報告書への献金などの不記載もそうだが、寄附についても結構細かく厳しいルールが定められていて、せっかく寄附したいという人が現れても、相手のことをしっかり調べずにうっかり寄附を受け入れたら、あとで大問題になることもある(民主党政権時に、外国人からの献金を受け取っていたことを理由に大臣が辞任に至ったケースもある)。 そうならないために、せっかく寄附の申し出をしてくれた相手方に対し、「あなたは●●に該当してませんよね?」と聞くのもたいがい失礼な話だから、相手方に秘密で調査した上で、何かと理由をつけて寄附を辞退しなければならない。寄附が禁止される人や団体の属性(後述)には確かに納得のいく理由があるものの、せっかくの善意を無にするということで、現場レベルでは何ともやりきれない思いのする制度である。 また、一定金額を超える政治献金を行うと、献金(寄附)者の住所や名前が政治資金収支報告書に記載され、現在はインターネット上で公開される仕組みになっている。それこそ、地方の首長(知事や市町村長)の再選を目指す後援会的なものは全国に無数にあるが、都道府県の選挙管理委員会のホームページを見ると、おそらく地元の名士と思われる、献金した個人の名前と住所が堂々と晒されている。 なぜ、政治資金に関するルールはこんなに細かく厳しいのだろうか。 そもそも、政治家(政治団体)への寄附というのは、請託(権力者へ特別な計らいを頼む込むこと)を伴う贈収賄と比べれば、一応、直接的な見返りを期待せずに行われるものである。とはいえ、政治家も人の子。どうしても、寄附してくれた人の方を向いて仕事をすることになりやすい(当然、寄附する側も一定の下心はあるだろう)。だから、政治家が誰からどのように支援されているかを広く世に知らしめることが、政治の透明性向上につながると考えているのだろう。 補助金などで官公庁から利益を受けた者や、外国人などからの寄附が禁止されているのも、特定の属性を持つ者の方を向いた政治が行われることを予防するという意味があるのだろう。