齋藤知事の「公職選挙法違反」疑惑に筆者が覚えた「違和感」…そもそもの「落とし穴」
本当に今のルールでいいのか
ただ、この仕組みでは、評判の良くない企業献金を減らして一般人から薄く広く政治家が寄附を募っていく社会を作ることは難しいと思われる。なぜなら、同調圧力が強く、個人の意見をはっきりと言わない政治文化を持つ我が国では、支持政党や特定の政治家を応援するという「政治的信条」を周囲に知られたくないと考える人が多いからだ。 そのような中で、政治資金規正法により寄附者の名前や住所まで公開されると、一人ひとりの有権者が特定の政治的信条を持ち、政治家を支持することを保障する「政治活動の自由」は制約を受けかねない。ある意味矛盾をはらんだ仕組みだと考えるのは筆者だけだろうか。 さて、いま本稿で紹介した選挙や政治資金に関する現行ルールへの問題提起は、細部まではりめぐらされた規制のほんの一部に過ぎない。実際には、もっとたくさん、疑問や矛盾を感じるようなルールがあるのだが、日本の政治文化が未成熟なためか、十分に議論されることなく、違反があった時にその事実だけが騒ぎになる状況が続いている。 私たちは、現在の制度が当たり前という思考停止に陥らず、本当に今のルールで良いのかという疑問を持ってみてもよいのではないだろうか。 続く後編『「公職選挙法」のせいで日本は「小物政治家」ばかりになる…行政評論家が提案したい「解決策」』では、政治家たちがそれでもとにかく部下や支援スタッフに細かく厳しいルールを守らせながら、政治という世界を渡っていくために、何が必要かについて考えてみたい。
大原 みはる(行政評論家)