「伊豆大島をインクルーシブ・アイランドに」 東大と障害者団体がシンポジウム開催
「伊豆大島にインクルーシブ社会を実現しよう!」 12月中旬、東京から約120キロ南の洋上に浮かぶ伊豆大島で、「インクルーシブ・アイランド・プロジェクト」と名付けられたシンポジウムが開かれた。 主催は、障害者団体の全国組織「DPI日本会議」と東京大学の「バリアフリー教育開発研究センター」。同会議と同センターがある東京大学大学院教育学研究科は2023年8月、障害の有無、人種、宗教、性別などに関係なくすべての子どもたちが共に学ぶ「インクルーシブ教育」の実現に向けた連携協定を結んでおり、シンポジウム開催はその連携の一環だ。 シンポジウムでは、「みんなが住みやすい地域って何?」「みんなが楽しく行ける学校ってどんな学校?」というテーマで、さまざまなディスカッションが行われた。島南部の会場に島民らが集まり、「私たちも一市民してやれることがあるんじゃないか、と思わされた」「島は規模的に取り組みやすいのでは」といった前向きな声も聞かれた。(文・写真:ジャーナリスト・飯田和樹)
生まれた人全員が持つものとは?
「ひらがな3文字です。わかりますか?」 シンポジウムの冒頭、同会議の崔栄繁議長補佐が「生まれた人全員が持つもの」について、参加者に質問した。崔議長補佐が用意した答えは「ちがい」。答えを明かすと、さらに続けた。 「人類は、昔から、どの民族、どの国にも、障害がある人が必ずいた。もともと、人類というのは、いろんな人がいるのが前提。でも、忙しい社会になって、そこからどんどん、障害者抜きに社会のしくみができた」 現代の社会は障害者の存在を考慮せずにつくりあげられてきており、そんな社会の側に障害があると考えるのが「障害の社会モデル」。インクルーシブな社会をつくっていくうえで大事な考え方であることを説明した。
大幅に減速した地域移行
続いて、同会議の白井誠一郎事務局次長が「障害者の地域移行の動向」について、地域生活に移行する障害当事者の数より、施設に新たに入所する障害当事者の数のほうが多いというデータを紹介した。 国連の障害者権利委員会は2022年9月、日本に対して脱施設・地域移行を進めるよう勧告しているが、全体で見れば「(地域移行は)大幅に減速している」と述べた。