知的障害者初の国連障害者権利委員、ロバート・マーティンさんが講演 「施設の中では自分の人生を選べない」「今こそ脱施設化に焦点を」
ニュージーランド出身の障害者権利活動家で、知的障害者として初めて国連障害者権利委員会の委員に選ばれたロバート・マーティンさんが17日、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で講演を行った。マーティンさんは「多くの国で、障害を理由に障害者が共同生活を強いられる施設が存在している。この施設の中では、障害者は自分の人生を自分で選び、コントロールしていくことができません」などと話し、障害者が施設ではなく地域で暮らすことの大切さを訴えた。
「人の態度こそが施設をつくる」
講演会は、障害当事者団体からなる「DPI日本会議」、知的障害者の当事者団体「ピープルファーストジャパン」、自立生活センターの連絡・協議団体「全国自立生活センター協議会」などが主催した。日本が障害者権利条約を批准後、初となる建設的対話(審査)が昨年行われ、日本政府に対して「地域移行」と「インクルーシブ教育」について早急な措置が必要であるとの総括所見(勧告)が出されたことを踏まえ、「脱施設化」をテーマに掲げた。マーティンさんは日本政府に対する審査に委員の一人として携わっており、「(津久井やまゆり園)事件を経て、このような施設で暮らす人がたくさんいることについて考え直したことはあるのでしょうか」と問うなど、施設の問題について鋭い質問を投げかけていた。 ニュージーランドでは最後の大きな入所施設が2006年に閉鎖されている。マーティンさんは「施設をつくるのはレンガやモルタルといった建材だけではない。人の考え、行動、態度こそが施設をつくる」と話し、「今こそが、脱施設化に焦点を当てる時。(脱施設に向けた)予算と期限をつけた計画を立ててください。共に行動を起こせば、変化を起こすことができる」と力強く訴えた。
「日本は障害者権利条約に従うつもりがないということなのか」
この日は、マーティンさんの講演だけでなく、「各国の取り組みと日本のこれからの課題」と題したシンポジウムも開かれ、カナダの知的障害者の当事者団体「ピープルファースト・オブ・カナダ」代表として入所施設の解体を進めてきたコリー・アールさんと、スウェーデンの当事者団体「グルンデン協会」のメンバーで、当事者が地域でよりよい生活をするために政治家や社会に訴える活動をしているエミリー・ムティエンさんが登壇した。 ムティエンさんは日本の現状について「入所施設がずっと残っているということは、つまり、障害者権利条約にいつまでも違反しているということ。この権利条約に従うつもりがないということなんでしょうか」と強い口調で話した。また、入所施設をなくしたスウェーデンにおいても、障害者の権利が侵害されていると考えられるようなケースがあることについて「私たちは、最後の血の一滴が流れるまで戦い続けていくつもりです」と熱を込めた。 (文・写真/ジャーナリスト・飯田和樹)