「青春に文科省も厚労省も関係ないのに……」車椅子での高校生活から見えてきた学校での介助をめぐる問題
「介助が必要であっても高校で青春を謳歌したい――」。障害のある若者のそんな思いを支えるはずの「特別支援教育支援員制度」が、必ずしも当事者ためのものになっていない現状を明らかにしたハンドブック「公立高校での介助って、実際どうなの?」が完成した。 発行したのは日常的に介助が必要な重度障害者の地域生活を支援する団体「わをん」(東京都武蔵野市)。障害当事者が編集やデザインを担当した。障害のある子どもが学校生活を送る上で重要な支援員制度をわかりやすく解説しただけでなく、介助を受けながら学校生活を送った経験がある障害当事者の声を紹介することで、制度をめぐる現状の課題を浮き彫りにしている。(文・写真:ジャーナリスト・飯田和樹)
当事者の希望より教育委員会の都合
特別支援教育支援員は、公立の幼稚園、小・中学校、高校において、食事・トイレ・教室間移動などの介助や障害種別に応じた学習支援などを行う。ただ、自治体に運用が委ねられていることなどを背景に、数多くの課題が指摘されている。 ハンドブックで明らかになった実際の「公立高校での介助」の課題とはどんなものだろうか。 当事者へのインタビュー調査を担当した、京都大学大学院生で脊髄性筋萎縮症(SMA)Ⅱ型という難病の当事者である油田優衣さん(26)によると、「制度の運用における課題」と「介助員との関係性の課題」の大きく二つの課題に分けられるという。 「制度の運用における課題」について、油田さんは三つの問題を挙げる。 「一つ目は『介助員が派遣されないために、行きたい学校に通えない』という問題。調査では、制度が使えなくて人的な支援なしで地域の高校に入学したが、結局は通信制の高校に転校したという方がいました」 「二つ目は『介助員が派遣される時間が十分でないために、正課の時間ですら介助が受けられない』という問題。介助員がつけられる時間数はその都道府県の教育委員会が決めていると思いますが本当にバラバラで、いわゆる1限から6限の時間すら介助に穴があるというケースもありました」 「三つ目は、二つ目とも関連しますが、『正課の時間しか介助員がいないために、放課後に学校に残って活動することができない』という問題です。高校生活って何も1限から6限だけを指すわけじゃないですよね。部活動をしたり、生徒会活動をしたり。あるいはただ友達と教室に残って喋って過ごしたりとか、ちょっと居残りして勉強したりとか。でも多くのケースで、介助員はいわゆる放課後の時間にはつきません。なので、正課外の時間を自由に使えないケースが多くあります。 本来なら、その生徒がどんな学校生活を送りたいかを主軸に、そのためにどういうリソース(ここでは介助員)をどれだけ当てがうかという順序で考えるのがあるべき姿。ですが、学校での介助については当事者の『こういう学校生活を送りたい』といった希望は聞き入れられずに、多くの場合、教育委員会側のルールとか都合で決められてしまっているという現状があると言えます」