「そこまで話すの?」小倉智昭を一番知っている“がん友達”の笠井信輔も驚いた「小倉本」の中身とは(レビュー)
『情報プレゼンター とくダネ!』(フジテレビ系)など、様々な番組でMCとして活動してきたタレントの小倉智昭。その『とくダネ!』のコメンテーターで年の離れた友人・古市憲寿を聞き手に、自身の半生やがん闘病、深く関係した芸能界の光と陰について振り返った一冊が、『本音』(新潮新書)である。小倉・古市と共に長年、番組を盛り上げ、誰よりも小倉のことを知るフリーアナウンサーの笠井信輔氏が『本音』の読みどころについて綴った。 ***
■生まれて初めての“小倉本”
こんなにも軽快に気楽に楽しく読め、そしてためになる本は久しぶりだった。 小倉智昭と言う人物像を思い描いた時に「頑固」「毒舌」「しつこい」「意地悪」「厄介なオヤジ」などといったところが一般的な印象であろう。20年間「とくダネ!」と言う朝の情報番組を、小倉さんのもとで一緒にやらせていただいた身として、TVを通して伝わるそういった人物像はあながち間違っていないだろう。 しかし、この本によって、やっとそのパブリックイメージが変わる時がやってきたのだ。 この本のどこが貴重かと言えば、これだけ有名で、あれだけ雑学やニュースに詳しい小倉さんなのに、生まれてから70年以上(愛犬ミレちゃんのフォトエッセイ以外)本を1冊も出していなかった点だ。 では、初めての“小倉本”は一体どんな本になったのか? それはまるでどこか隠れ家のようなバーで、小倉さんと2人で静かにジャズなどが流れる中、バーボンを傾けながら、こんな話聞いてしまっていいのかな? と言う内訳話を聞いてるような感覚になる本であった。 そう、読んでいると言うより、小倉さんの声が聞こえてくる本。 だから、読みやすいし、そんな差し飲みは当然ワクワクしてしまう。そんな思いでページをどんどんめくってゆくと、自分だけ特別な話をしてもらっていると言う感覚になってしまうのだ。
■この“本”からは小倉さんの声“音”が
『本音』――。誰がつけたのであろう。うまいタイトルだなと思った。小倉智昭の“本音”がここには山のように入っている。そしてこの“本”からは小倉さんの声“音”が聞こえてくる、だから、『本音』とはそんなダブルミーニングによってつけられたタイトルだと解釈することができた。 もちろん、ここまで1冊の本もきちんと書いていない小倉さんが、がんになったからといって、がんが再発したからと言って、「とくダネ!」も終わって、もう70(歳)を超えたから一区切りと言って、簡単に本を書く人では無い事は、私が1番よく知っている。 自分の好きなことには邁進するが、興味のないことには「俺はいいよ」と動かない人だから(笑)。それを引っ張り出した功労者は、対談相手の「とくダネ!」レギュラーコメンテーター古市憲寿さんである。 「とくダネ!」20年の歴史の中で、彼の登場は非常に重要であった。 番組の基本コンセプトに、「小倉さんに好き勝手しゃべってもらう」と言う初代プロデューサーの方針があった。一方でアシスタントMCである私が強く言われていた事は……。 「笠井、お前の役割は、とにかくスタジオで小倉さんの反対のことを言うことだ。小倉さんがAと言ったらB。Bと言ったらA。とにかく反対意見を出してディベートをしなさい」というものだった。