50代になったら「仕事の責任」は脇に置け…和田秀樹が「老後に楽しみをとっておく人はバカ」と説く理由
50代から豊かな老後を送るにはどうしたらいいか。医師の和田秀樹さんは「50代になったらこれまでの『常識』は捨て去り、仕事の責任やお金の心配は脇に置いてでも、自分の人生を楽しむべきだ。そのほうが結果的に、仕事や家族も含めたトータルの人生が豊かになっていく。老後に楽しみをとっておくなんてバカな考え方は、しないほうがいい」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、和田秀樹『老後に楽しみをとっておくバカ』(青春出版社)の一部を再編集したものです。 ■50代で「まだまだ自分のことはガマンして頑張る」は大間違い 人生100年時代などといわれますが、そう考えると、50代はちょうど折り返し地点と言えるでしょう。 年齢的にだけでなく、仕事や人生のステージにおいても、登山で言えば、すでに上り坂を過ぎて、頂上を経験し、今や下り坂を歩み出していると感じている人も多いと思います。 そのいっぽうで、今の50代が背負う荷物は、決して軽くありません。 会社で責任ある仕事をまかされる機会は多く、組織全体や部下のことを最優先に考えるべき管理職でもある場合がほとんど。住宅ローンや教育費といった大きな支払いがまだ続いている方も少なくないでしょう。 両親に会うたびに体も声も小さくなっていて、近い将来、介護でお金や労力がとられることを想定しておく必要もあるかもしれません。 「だから、まだまだがんばらなければ!」 「自分のことはガマンしても、会社のため、家族のために働こう」 「老後の生活のことを考えると、今は仕事優先で、お金を貯めておかないと」 「好きなこと、やりたいことは、仕事人生が一段落してからゆっくり楽しもう‼」 そんなふうに考えている人が少なくないのではないでしょうか。 でも、その考え方は、今すぐ捨てたほうがいいと私は思います。誤解を恐れずに言えば、それは大きな間違いだ、とも。
■やりたいことの先送りは、残りの人生においてリスクそのもの 本稿を読んでいる人は、50代か、あるいは50代を目前にした人でしょう。50代こそ、自分がやりたいことをやるべきなのです。 そう言うと、 「今は仕事や家族に対する責任がある」 「老後の生活を考える必要がある」 「忙しくて時間がない」 「体力も衰えを感じるようになってきたし」 といった反論が返ってきそうです。でも、だからこそ、ずっとやりたかったこと、いつかは試してみたかったことを「今」始めるべきです。 それは、スポーツやダンス、旅、グルメといった趣味でも、資格の勉強でも、仕事のスキルアップでも、なんでもかまいません。 50代で、やりたいことを先送りしていることは、残りの人生においてリスクそのものです。 あえてきつい言い方をすれば、老後に楽しみをとっておくなんてバカな考え方は、しないほうがいい。 その理由をこれからつまびらかにしていきたいと思います。 ■定年退職したら、子供が自立したら……では遅い理由 ピカピカだった新車も何万キロメートルも走り続ければ、あちこちが故障し始めます。 私たちの心身も50代にもなれば、少しずつガタついてきます。 まずは筋力。筋肉は40歳あたりを境にじわじわと落ち始めます。加齢によって細胞が劣化するため、肌も内臓も劣化していきます。 腰や膝などの痛みも出てきて、激しい運動をすると腰や膝に負担がかかり、スポーツを楽しむのが難しくなります。 「65歳の定年を迎えたら、世界中の雪山をめぐってスキーを楽しもう」 そんな夢は今だからまだ抱けるのです。 実際に65歳になったら、衰えた筋力やガタのきた膝では、スキーのようなハードな運動が困難になっているかもしれません。 「そうか。でも私は文化系だから関係ない。会社を辞めて落ち着いたら、好きな本や映画にどっぷり浸って過ごすつもりだ」 「自分もだ。会社人間の荷を下ろしたら、大学に入り直してずっと勉強したかった世界史を学び直してみたい」 「自分は起業に挑戦したい。今いる会社ではできなかった夢を叶えたい」 なるほど。 しかし、老化は何も体力だけに表れるわけではありません。 むしろ深刻なのは、脳の老化=感情の老化です。