「良い商品」だけでは「届かない」。中川政七商店のマーケターが語る「ブランディングに大切な視点」
「良いサービスだという自信がありましたが、事業はクローズしました」 いい商品でも売れない時代。デジタルを駆使すれば売れるのかというと、必ずしもそうではない。
新卒で入社した会社でスーツレンタルの新規事業の立ち上げに携わるも、「良いサービスだったのに事業が撤退する」という経験をした。「商品を届ける」難しさを痛感してきた中川政七商店のマーケターである中田氏。現在は、「日本の工芸を元気にする!」という会社のビジョンに向かって、CRMデータを活用したブランド戦略に取り組んでいる。常に「デジタルにおけるブランド体験」と向き合っている中田氏に、仕事に関するマイルールを聞いた。
中田氏は、新卒で入社したAOKIホールディングスで、スーツレンタルの新規事業立ち上げと撤退を経験した。 中田氏はそれまで実店舗での販売や商品企画、生産管理を担当し、プロジェクトではレンタル商品の管理をする役割でアサインされた。ただ、プロジェクトメンバーは、10名以下の少数精鋭のチーム。最終的には職種の枠を飛び越え、サブリーダーのような立ち位置で事業の計画立案から経理の申請など細かな業務も一貫して自分たちで行った。 スーツをレンタルするビジネスでは、会員の望むサイズに対応できるよう20~30もの幅広いサイズ展開のスーツを用意する必要がある。できる限りコストを抑えるにはどうしたらいいか、どのようなサイクルで商品をまわすかを考える必要があった。 ┌────────── 今までの仕事とはまったく違う思考が必要で、それが大変でもありおもしろくもありました。自分の知識不足を感じて、その頃からベンチャー企業の経営本やデジタルマーケティングの本などを読むようになったんです。チームには本が好きな人が多く、週に2~3冊本を読んでは会社の本棚に置いていきます。チームの机の近くにあった空の本棚は、あっという間にいっぱいになりました(中田氏) └────────── プロジェクトチームには一体感があり、それぞれが熱をもって仕事に取り組んでいた。しかし、サービスのローンチから半年ほど経った頃、新規事業の撤退を余儀なくされる。事業をグロースすることが困難だという経営判断が下ったのだ。 ┌────────── 仕入れていた商品を店舗で販売するために各所に相談したり、経理の細かな処理をしたり。何よりつらかったのは、時間を共に過ごしたメンバーがチームから去っていくこと。私は最後まで処理を続けていましたが、クローズ処理がすべて終わるまでモチベーションを維持し続けることが難しかったです(中田氏) └────────── 新規プロジェクトが撤退という形で幕を下ろし、中田氏が強く思ったのは「商品の良さだけではお客様には届かない」ということだ。商品やサービスを広めるには販促の知識やスキルが必要だと痛感した。特にこれからの時代は、インターネットやデジタル系のスキルが不可欠と考え、デジタルのコンサル事業会社へ転職。異業種への転職だが、身につけたいスキルを経験できる環境に魅力を感じたという。