「命令に背くことはできない」タリバン政権下で“死刑宣告”、弁護士一家 アフガンからの国外脱出【報道特集】
ファティマさん一家が潜伏生活を始めてから2年以上が経った、ある日。瀬谷さんのもとに、ファティマさんから悲痛なメッセージが届いた。 ファティマさんからのメッセージ 「今日、私の夫がキッチンのガスを使って、一家心中を図りました」 きっかけは、同じくタリバンから追われていた元同僚の自死だったという。 瀬谷ルミ子さん 「元同僚が命の危険から地方に逃げて、働くこともできず、潜伏生活をする中でお金も尽きて、最後にはパン一切れも子どもたちに買ってあげることもできなくなって―。絶望から首を吊って自死したという様子の動画が送られてきて、旦那さんはそれを一日中ずっと見続けていたと」 ファティマさんからのメッセージ 「人生に疲れてしまいました。問題ばかりで、生きる気力も残っていません」 極限状態に置かれたファティマさんたち。瀬谷さんは、一家を隣国・パキスタンに一時的に避難させるべく、ビザの取得に動き出した。 数か月後…ついに、アフガニスタン脱出の日が決まった。 ■約200キロの国外脱出 日の出までに7か所の検問所通過を目指す 瀬谷ルミ子さん 「印刷するな、共有もするなと(伝えた)」 ファティマさん一家のパキスタンへの退避が決まって間もなく、瀬谷さんがファティマさんに送ったのは、一通の指南書だ。 そこには、一家で国境を越えるにあたっての、注意事項が書かれているという。 瀬谷ルミ子さん 「持ち物は、1人1個のバックパック。あとは見られたら困るような写真やデータを全て消していくこと、どういう服装をしていくとか。今のタリバン政権が望む服装に沿っている格好をしないと、その服装だけで尋問されたりするリスクが高まるので」 脱出には現地の支援チームが付き添い、潜伏先から国境まで、車で移動する。出発の前日、私たちはファティマさんに心境を聞いた。 ファティマさん 「ようやく家族の安全を確保できると思うと、嬉しい気持ちでいっぱいです。ただ、愛する祖国を後にすること、両親や兄弟と離れることは、とても寂しくもあります。最も悲しいのは母の事で、最愛の母ですから…。別れるのはとても辛いです」