世界から見て、日本は“ヘンタイカルチャー”なのか。日本を愛するイスラム教徒アメリカ人が「残念」に思うこと
◆日本をよく知る外国人から見た日本社会とは?
――これまでのインタビューでアニメとの出会いや日本語の習得、日本旅行など多くのことを語っていただきました。日本に造詣の深いシャラニカさんがこれまでに日本や日本人について学んだことを教えてください。 「私の周りでも日本に旅行する人は多いです。日本旅行ははやっているし、SNSにもそういったコンテンツがあふれているので、興味を持つ人も当然多くなります。しかし、ほとんどの人は日本について私のようには勉強したことのない人たちです。 そういう人が日本旅行から帰ってくると、こんな感想を伝えてくることがあります。『日本人ってちょっと特殊な感じがした』『売春がごく普通に行われていてショックだった』『サラリーマンカルチャーってやばすぎる』『初音ミクと結婚した人がいる』などです。 日本文化の奇異な一面にだけ目を向けて、日本は変だ、変わっている、と言うのは、自分がこれまで見たことがないものを受け入れないことだと思います。個人的には日本が変だとは思いません。むしろそういう感想には心外しちゃいます。日本文化の価値を、例えば『ヘンタイカルチャー』として捉えて貶めているような気がするからです。 海外の人には変に見える日本独特の現象の裏側には、実はとても複雑な理由があることを知っています。そして解決の仕方がアメリカ人とは少し違うだけ。深く掘り下げていけば、私もあなたも同じ人間なんです。 日本人の行動には理由があり、私が尊敬することもたくさんあります。清潔さ、秩序、思いやり、他人への尊重。それらを日本を通じて学び、そして自分の日常の中にも採り入れています。もしかしたら私がイスラム教徒だということも関係しているかもしれません。イスラム教と日本の文化は相性が良いと思います。イスラームの教えでは、私たちは清潔にしなければなりませんし、他者に思いやりを持たなければなりませんから」
◆日本の社会の中に入ってみて思うこと
――とてもポジティブな考えを聞かせていただけて大変勉強になりました。こんなふうに歩み寄って理解しようとする外国人が増えると、とてもうれしいなと個人的には思います。逆に日本で生活してみて、自分とは合わないなと感じることはありましたか? 「他者を理解するという点では、もう少し学ぶ余地があると思います。日本でホームステイをしていた時、ホストマザーは日本人で私の母よりも年上の女性でした。彼女はずっと私のことを『アメリカ人』だと思い込んでいて、毎日ハンバーガーやパスタを食卓に並べました。 私は常々『私は「バングラデシュ系のアメリカ人」です』『バングラデシュでは毎日お米と魚を食べます。だから私は和食も大好きです』と伝えていたのですが、その次に食卓に並んだのはカレーでした。とうとう留学センターを通じてコミュニケーションを手伝ってもらうことにしました。その日、初めて和食が並びました。焼き魚、みそ汁、白米、煮物など。とてもおいしくて完食しました。 翌日、ホストマザーが娘さんに電話で話しているのを聞きました。『今ホームステイしている外国人の子、和食を出したらまるで猫が食べたみたいにきれいに魚を食べたよ』と。それを聞いて私はめちゃくちゃ笑いました。 だからバングラデシュ系だと言ってたのに! と思って。そこからは毎日魚の和食でした。とてもおいしくてありがたかったです。これは一例ですが、日本人は文化の異なる外国人のことを知る機会がもっとあってもいいと思います」