避難所運営になぜ女性が不足しているのか――性トラブルや健康被害を減らすためにできること #災害に備える
能登半島地震からひと月半が過ぎた。災害対策に女性の視点が足りないことが指摘されている。これまでの災害時も、避難所では「ついたてがなく、着替えができない」「生理用品が受け取れなかった」といった困りごとのほか、DVや性暴力など、さまざまな問題が起きてきた。避難所のリーダーは男性が中心で、女性委員が一人もいない市区町村防災会議は全国で2割以上におよぶ。誰もが快適に過ごせる環境を作るために、女性の視点は不可欠だと専門家は言う。日頃から知っておきたいことや避難所運営の現状と課題、備蓄に加えたいものなどについて医師と専門家に聞き、図解とともにまとめた。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
ナプキンの節約やトイレの我慢で重症化のリスク
「性に関する特有の困りごとや生理現象は、知らないと問題意識も持てませんから、お互いに知っておくことが重要です。性教育というと、子どもや若者に向けて伝えることが多くなりますが、災害はいつ誰にでも起こり得るので、どんな年代の人も知っておくべきだと思います。学校や職場でも、災害研修などに盛り込んでいただけるといいですね」 産婦人科医の重見大介さんは、避難所などにおける二つの課題を指摘する。知識や情報の共有と、対面での配慮だ。 「知識や情報の共有として挙げられるのは、例えば女性の月経。実際どんなふうに起きていて、どのくらいの経血量や日数で、個人差がどの程度あるのか。放っておくとどうなるのか。男性は知らない場合も多いでしょうし、女性でも『自分は軽いので、大変な人のケースは分からない』という人はいるでしょう。知っておくことで埋められるギャップがあります」 災害時には、避難所で生理用ナプキンが「ぜいたく品とみなされる」「1人に1枚ずつしか配られない」など、知識や理解が足りないためにさまざまな困りごとが起きている。 「衛生状態は非常に大事です。ナプキンを節約したり、タンポンや月経カップを放置したりすることで、菌が繁殖します。月経は血液が出るわけですが、血液は栄養が豊富なので菌が繁殖しやすい。腟、子宮、骨盤はすべて一つの通り道でつながっていますから、菌が奥に入り込んで骨盤まで達して、骨盤内感染症を引き起こすケースがあります。ひどくなると血液中に菌が巡って、菌血症や敗血症になることがあるのです」 そのほかに知っておきたい症状として、膀胱炎や更年期障害を挙げる。 「女性は膀胱炎になりやすいので注意が必要です。プライバシーが配慮されていないといった理由でトイレを我慢してしまうと、膀胱炎になり、ひどくなると腎臓まで感染が広がって重症化してしまいます。また、男性にもありますが、女性に症状が出やすいものとして挙げられるのが、更年期障害です。関節の痛みや不眠、それから温度調節が難しく、ほてりや寒気がつらい場合があることも認識しておきたいですね」