避難所運営になぜ女性が不足しているのか――性トラブルや健康被害を減らすためにできること #災害に備える
性暴力を抑止するためにできる具体策は
これまでの災害時に、DVや性暴力が発生したことが明らかになっている。 「DVは災害後に増える傾向があります。もともとDV傾向のある人がひどくなる場合が多い。避難所では人目があるので表面化せず、仮設住宅に移ってから、ということも多いですね。そのため、早くから被害者支援や相談窓口などを周知しておく必要があります」(前出の松川さん) 性暴力については、支援者も含め、どういう“手口”があるのか知っておくことが抑止につながると松川さんは指摘する。 「暗い屋外やトイレだけではなく、例えば『お風呂を使わせてあげる』と誘うなど、支援を口実に性的搾取されるケースもあります。支援者側も過去に起きた事例や手口を知っておくことで、被災者が不安なく支援を受けられるようにするにはどうすればいいか、考えることができるでしょう」
仮設トイレをどう配置するかなど、環境のデザインが大事だと松川さんは言う。犯罪が起こりにくい環境や体制づくりについて、浅野さんはこう語る。 「相談先や情報の提供は有効です。相談先を記したポスターを避難所の見えるところに貼っておくだけでも、抑止の効果はあると思います。周りの人と話題にしやすくなりますし、すぐに相談できなくても、相談先を把握できます。また、プライバシーが守られていない環境では、相談しているところを誰が見聞きするかわかりません。ある程度避難所の状況が落ち着いてきてからになりますが、ハンドマッサージやネイルケアなどの支援の場を作ると、声を拾える場合がありますね」
アウトドア防災ガイドのあんどうりすさんは、第三者の目があることをさまざまな形で伝えておく必要があるという。 「第三者が傍観者にならないための啓発は大事ですね。避難所の中には、トイレにナースコールを置いているところもあります。具合が悪くなった時にも役立ちますし、身の危険を感じた時に押すこともできるわけです」
あんどうさんは、防犯の視点から備蓄に加えておきたいものをアドバイスする。 「避難所内では、防犯ブザーより災害用のホイッスルのほうが周りの人を疑っているように見えず、手元に持ちやすいという声もありました。また、トイレに行く際、両手があくヘッドライトが役立ちます。ご自宅の備蓄に加えておくとよいでしょう。避難所用の備蓄には、ソーラーセンサーライトでかなり明るくなるものがありますので、事前に準備があればと思います」 「自分がもしかしたら被害を受けるかもしれない」という視点で環境を整備する必要があると、松川さんは言う。 「被害を受けるかもしれない人たちが守られる環境を作る。性的搾取をされやすいのは、弱い立場に置かれている人たちです。権力構造の中で搾取されない状態を作るため、末端まで支援が行き届くような災害対応を、一日でも早く行わなければなりません。日本では人権や性に関する教育が遅れているため、本来はそこから変えていかなければなりませんが、災害は待ってくれない。被災地においても、平常時の備えでも、今できることをとにかくやりましょう」 (取材・文:塚原沙耶) ----- 「#災害に備える」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。地震や台風、火山の噴火などの自然災害は「いつ」「どこで」発生するかわかりません。Yahoo!ニュースでは、オリジナルコンテンツを通して、災害への理解を深め、安全確保のための知識や、備えておくための情報をお届けします。