避難所運営になぜ女性が不足しているのか――性トラブルや健康被害を減らすためにできること #災害に備える
二つ目の課題である対面での配慮については、女性同士がコミュニケーションを取りやすい体制を作ることが大切だという。 「避難所で生理用品や下着が支給物品として届いた際、配る人が男性だと、受け取りに行きづらかったり、大変さを伝えられなかったりするなど、心理的抵抗が生じる場合がある。女性がなるべく配るようにするなど、対面での配慮はやはり必要だと思います」 また、妊産婦は要配慮者であり、特有の注意点もある。 「妊娠初期だと周りの方からわかりづらいこともありますので、避難所では妊娠していることを必ず伝えるべきです。避難所の体制としても意識してほしいですね。マタニティーマークも常に携帯しておくとよいでしょう。妊産婦は必要な摂取カロリーが非妊娠時より多いですし、なるべくビタミンやミネラルも取ってほしい。塩分を取るとむくみが出やすく、つらくなることがあります。体を動かさない、水分が取れないという状況が続くと血栓症のリスクが上がるので、注意が必要です」 能登半島地震においては、被災地の妊産婦や子育て世代へオンライン相談サービスを提供しているという。 「小児科医や産婦人科医、助産師に無料で相談できるサービスを地震の前から能登町に試験導入していただいていました。通信状況などの問題もありますが、今後こうしたオンライン相談のサービスが広がっていくと心強いのではないかと思います」 備蓄に関しては、自分に合わせて準備しておくことを勧める。 「必要なものや数には個人差がありますよね。市販の防災セットに女性用品が入っていない場合も多いですし、ご自分で、あるいは家族が、それぞれに合わせたものを追加で用意しておくとよいでしょう」
「女性委員ゼロ」の地域も多数 どう増やす?
兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の松川杏寧准教授は、女性の視点は女性だけのためではなく、快適な環境にするために不可欠だと語る。 「人口の半分は女性ですから、女性の視点を入れるのは本来当然ですが、そうなっていません。避難所は、仮の生活を送る場。復興に向けて踏み出せるように、身体的にも精神的にも元気で、安心して過ごせる環境を整えなくてはなりません。普段から家事労働の多くを女性が担っている状況がありますから、女性の視点を入れなければ快適な生活環境にするのは現実的に難しいでしょう。環境が悪いと健康被害が出て、災害関連死につながることもあるのです」 避難所を設置、管理するのは行政だが、運営は基本的に各地域に委ねられている。避難所のリーダーの決め方は地域により、自治会や町内会の会長など、地域のリーダー的な存在が担う場合もあれば、その時にリーダーシップを取れる人が自然と役割につく場合もある。