【札幌2歳S回顧】短距離血統の2頭でワンツー マジックサンズ、アルマヴェローチェともに見どころあり
牡馬相手で健闘したアルマヴェローチェ
この日の札幌は週中、そして当日の雨によって終日重馬場。洋芝の道悪は一気にタフな状態になる。人気のアスクシュタインがダッシュ力の差で先手を奪い、前半1000m1:01.1は平均ペース。先行勢は力がなければ残れないが、差し馬も確かな脚力がなければ太刀打ちできない流れとなった。 後半800mは12.1-12.6-12.2-12.4。中盤も緩まず、かつ、マジックサンズが先頭に並んだ地点でギアがひとつあがった。レース上がり37.2、マジックサンズの上がり36.6も目立つ記録ではないかもしれないが、外からひとまくりを決めた内容は濃い。皐月賞馬で今夏、札幌記念2着ジオグリフのイメージに近い。ジオグリフが勝った札幌2歳Sは良馬場で時計が出る馬場だった。 マジックサンズにハナ差まで迫ったのがアルマヴェローチェ。同じような位置からレースを進め、勝負所はひと呼吸おいてインに飛び込んできた。横山武史騎手らしい仕掛けが光った。とはいえ、こちらは牝馬。前走新馬は逃げてマイペース。今回は中団から仕掛けを待つ形と対照的なレース振りにセンスを感じる。 こちらも母系に短距離馬サクラバクシンオーの名があり、レイズアンドコール、ラクアミとスプリンターが続いた一族。父ハービンジャーは短距離馬ツルマルワンピースとの間にグランプリホースのブラストワンピースが出た例があるように、短めの血統からスピードをもらうとおもしろい。 アルマヴェローチェはこの2戦は稍重、重なので道悪への適性も感じる。道悪に強い牝馬はマリアライトやレイパパレ、クロノジェネシスと牡馬との戦いで真価を発揮するイメージがある。牝馬同士の軽いレースになった際、取りこぼす可能性はあっても忘れないでおきた一頭だ。 3着は1番人気ファイアンクランツ。マジックサンズやアルマヴェローチェをターゲットに仕掛けていったがひと伸び足りなかった。母カラフルブラッサムは1、2着の母とは異なり中距離タイプで、やや晩成のきらいがあった。併せ馬で遅れるなど調教でも無理をさせておらず、現時点での完成度の差も感じる。堀宣行厩舎はこういったタイプを大成させる手腕に長けており、長い目でみよう。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳