アフリカを蝕む「資源の呪い」 現在の輸出傾向から探る経済成長への鍵
前回(第2回)は、1960年代前後に独立したアフリカ諸国の経済が、植民地支配下で形成された単一産品輸出依存の体質を引き継いでいたこと、その体質は21世紀になってから起こった高度経済成長の間も継続している面があると述べた。そして、その植民地的体質は一切変わっていないのか、それとも何か新しい芽を見出せるのかを検討していく必要があると指摘した。 そこで、今回はアフリカ経済がどれだけ単一産品輸出依存的な体質にあるのか、その体質から変化する動きはあるのかどうか、詳しく見ていくことにしよう。(解説:京都大学大学院および神戸大学大学院教授 高橋基樹)
アフリカ経済はどれだけ単一産品輸出依存的体質なのか?
まず、図1の棒グラフの左側の2012年の状況を見てほしい。これは、同年のサハラ以南のアフリカ(以下単にアフリカ)の輸出の品目構成を示している。アフリカの輸出額は2003年ごろから成長率と同様に急伸してきたが、2012年にピークを迎えている。
2012年の輸出品目構成を見ると、鉱物性燃料等が半分以上(正確には54.1%)を占めることが分かる。この鉱物性燃料等の大半は原油で、その他に天然ガス、石炭などが含まれる。そして、鉱物性燃料等に次いで多い輸出品目は金、プラチナ、宝石などの貴金属等であり、続いて第3位が鉄鉱石などの鉱石等、第5位が銅及び関連製品である。これらの鉱産物だけで合わせて約7割を占める。輸出に占める鉱産物の比率のこうした高さは、アフリカの「資源豊富な大陸」というイメージを裏書きしている。 他方、世界銀行(世銀)のデータでは、同じ2012年にアフリカの国内総生産(GDP)合計に輸出が占める比率は32.3%で、先進国に比べてかなり高い(米国のGDPに輸出が占める比率は13.6%、日本は14.5%である)。つまり、アフリカ経済は輸出収入に大きく依存し、さらにその輸出収入の多くの部分を鉱産物に頼っている、ということである。それは、アフリカ経済全体の成長が、国際市場で決まる鉱産物の価格に左右されることを意味している。単純にただ一つの輸出品目に集中しているわけではないが、限られた種類の輸出品=鉱産物にアフリカ経済が依存していることはたしかなのである。